2025年8月19日、東海大学の芸術学科・松本奈穂子研究室に、東京学芸大学教育学部自然科学系基礎科学講座物理学分野の小林晋平教授と研究室の学生さんが来校されました。

小林教授は、NHKの教養番組『3か月でマスターするアインシュタイン』で講師を務めるなど、理論物理学の分野でご活躍されています。「ブラックホールの内部構造」や「宇宙の始まり」といった宇宙物理学の内容から、音響・光・津波など、身近な自然現象まで幅広く研究されているだけでなく、そうした最先端の物理学や数学を一般の方に向けて紹介する講座を多数開催していらっしゃいます。中でも、クラブで宇宙物理学の内容を語るサイエンスイベント「夜学」は、音楽と物理を融合させた他に類を見ないサイエンスエンターテインメントとして、様々な業界から関心が寄せられています。今回の訪問は、文化社会学部北欧学科原田亜紀子先生のご紹介で実現しました。原田先生は、北欧の市民性教育を専門とし、特にデンマークに焦点を当てて、子どもや若者の意思決定過程の参加について研究し、講演会や書籍、教育新聞などで発信しています。長年に渡り、アマチュア演奏家としてフルートやピアノに親しみ、オーケストラや合唱団に参加、以前勤務していた高校で吹奏楽部の指導に当たっていました。古楽への関心も高く、リコーダーを片手にイタリアのサマーコースにしばしば参加し、チェンバロやヴィオラ・ダ・ガンバといった古楽器とのアンサンブル経験もあります。原田先生と小林先生は、以前から教育学の分野で連携しておられたことから交流があり、この機会に松本研究室が管理する貴重な古楽器を見学いただくことになりました。
当日は、原田先生の案内で10号館を訪れ、松本先生がチェンバロ、クラヴィコード、ヴィオラ・ダ・ガンバ、フォルテピアノ、パイプオルガンをご紹介しました。実際に楽器に触れた学生の皆さんは、とても熱心で好奇心の塊そのものでした。小学校教員養成課程でピアノを履修している学生さんたちは、普段弾いているピアノとは異なる鍵盤の感触や音色に新鮮な驚きを感じていました。また、全員が物理学専攻であるため、その場で早速解析なども試し、あっという間に時間が過ぎました。なかなか触れる機会のない「宝の山」のような古楽器を間近に見て、小林教授はさまざまな研究や教育への構想を閃かれたようです。


今回の訪問を終え、各先生方と参加された学生さんのうち二名からコメントをいただきました。
松本先生(芸術学科)
「本学が所蔵する古楽器の価値を理解してくださる方々と接点ができ、大変嬉しく思います。原田先生、小林先生と協力し、これらの古楽器を活用して音楽教育と物理教育を統合させた独自の研究・プログラムをご一緒に展開させていけるのが楽しみです。」
原田先生(北欧学科)
「今回の小林研究室の訪問を通して、松本先生、小林先生と協働し、これから音楽教育と物理教育が連携するプログラムの開発の可能性を多いに感じました。今後の展開にワクワクしています。」
小林先生(東京学芸大学自然科学系物理科学分野)
「古楽器を通して、音の性質と楽器構造の関係を改めて考えさせられました。現代楽器との違いには、音響学的にも教育的にも多くの示唆があります。児童生徒にとっても魅力的な題材であり、音楽の理解が物理を深め、物理の知識が演奏を豊かにする可能性を感じました。松本先生、原田先生との共同研究が、非常に意義深い学際研究に発展する可能性を感じています。」
井上拓人さん(東京学芸大学教職大学院1年生・小林研究室所属)
「普段触れることのできない、貴重な楽器の数々。その一つひとつの響きに触れ、音楽と物理の面白さを改めて感じました。教員志望の私にとって、学びを深める原動力となる体験でした。」
菊池幸記さん(東京学芸大学教職大学院1年生・小林研究室所属)
「初めて出会った楽器が奏でる音色と、音が出るメカニズムを、見て、聴いて、触って、楽しみながら学ぶことができました。 特にパイプオルガンの荘厳な音色と複雑な仕組みには、メンバー全員大興奮でした。」

