「小田原市民会館大ホール壁画の保存修復プロジェクト」のトークイベントで田口准教授が講演しました

教養学部芸術学科の田口かおり准教授が12月3日に、神奈川県・小田原三の丸ホールで開催された「小田原市民会館大ホール壁画の保存修復プロジェクト※」を紹介するトークイベントで講演しました。この催しは、同ホールで12月3日から13日まで開催されている「のこす つなぐ よみがえる 小田原市民会館大ホール壁画の記憶展 Vol.1」に合わせて企画されたもので、市民ら約30名が参加しました。

トークイベントでは最初に、小田原ミュージアムプロジェクトの深野彰氏が登壇。小田原市民ホールの建築的な特徴や歴史的背景、壁画の作者である西村保史郎に関する調査結果、保存修復プロジェクトの概要を紹介しました。その後、田口准教授が壁画保存に向けた取り組みを紹介。コンクリートの上に張られたクロスに描かれ、かつ石膏などのもろい素材が多用されている作品の保存に向けた試行錯誤の経過や、剥がしたあとに行った壁画の調査や洗浄、補修などについて詳細に報告し、「相談を受けた当初はこの作品をどこまで残せるのか不安もありました。しかし、市民や行政、地元企業や東海大学の学生たちなど、このプロジェクトにかかわった誰もがあきらめなかったことでその一部を保存し、今回展示することができました。これまで国内では、公共施設の解体とともに付属していた美術作品も失われることが多かったので、今回のプロジェクトは多くの関係者の熱意が生んだ稀有な取り組みになったとも考えています。美学や美術をはじめさまざまな分野から建築物の中に設けられた空間や設備の保存について議論を喚起し、各分野の発展に貢献できる重要な成果になりました」と話しました。

なお、同プロジェクトの最終成果報告と西村保史郎の作品を紹介する展示会「のこす つなぐ よみがえる 小田原市民文化会館大ホール壁画の記憶展 Vol.2」は、2023年2月28日(火)から3月13日(月)まで小田原三の丸ホールで開催されます。

※小田原市民会館大ホール壁画の保存修復プロジェクト
小田原市内の市民団体「おだわらミュージアムプロジェクト」が中心となり、小田原市市民提案型協働事業の採択を受けて2017年から展開されている取り組み。公共施設に設置された美術作品を市民主体で保存する新たな活動として注目を集めています。同プロジェクトが、21年に閉館が決まっていた小田原市民会館内に設けられた美術作品の調査を行ったことで、1階と2階の壁面が西村保史郎による作品であると判明し、その保存・修復活動が進められてきました。同プロジェクトには五十嵐写真館や株式会社まるだい運輸倉庫など地元企業も協力。田口准教授は、21年から絵画の修復・保存の専門家として参画し、森絵画保存修復工房とも連携しながら保存方法を検討。22年6月には本学の学生も参加して壁画の一部を引き剥がす作業を行いました。8月からは壁画の調査と洗浄、修復作業などに取り組み、12月の展示では作業の終わった一部の作品を展示。3月の展示会ではすべての作品を展示する予定になっています。同展覧会は公益財団法人花王芸術・科学財団の助成を受けています。