文学部広報メディア学科のメディアプロジェクト・テレビ班のメンバーが3月20日から27日までベトナム・ハノイ大学を訪問。同大学の日本語教育学部の学生と日本語ワークショップに取り組みました。テレビ班では、2001年から隔月で15分のドキュメンタリー番組「ミネスタウェーブ」を制作しています。15年には国際交流基金アジアセンターと、「日本の今の姿を学生の視点で切り取っているミネスタウェーブを、ベトナムの大学で日本語を学ぶ学生に向けた教材として活用できないか」との提案、協議を経て16年秋よりハノイ大学をはじめとした5大学に映像提供しています。
同センターの稲見和巳さんは、「語学学習で大切なことは文法や語彙だけでなく、言葉の背景となる文化事情を理解すること。海外の日本語学習者は本国への関心が高く、真面目に勉強していますが、情報の入手先は主に教科書や教員、インターネットに限定されがちです。いまの日本、しかも同じ学生目線で捉えた日本の姿は学習者の共感を呼び、日本語を学ぶ上で貴重な資料になる」と話しています。本ワークショップもまた、番組内で出てくる日本語の使い方や番組制作時の裏側を現地の学生に伝える中で、両国の学生の交流を深めてほしいと初めて実施したものです。
ベトナムを訪れたのは、秋本純さん(広報メディア学科3年次生)、佐藤加奈さん(同)、鈴木佳奈さん(同)、尾前隼士さん(同2年次生)の4名。まず、国際交流基金の現地スタッフから日本とベトナムの国交の歴史やベトナムの現状についての講義を受け、現地の学生はベトナムに数多く進出している日系企業や日本での就職を目指し日本語の習得に熱心であることや、男性よりも女性の方が働いている割合が高いことなどを学びました。ハノイ大でのワークショップでは、65名の現地学生とともに番組を視聴したあと、グループに分かれて気になった日本語や番組を見た感想を模造紙にまとめて発表。現地の学生は、「『かっこいい』という言葉は容姿だけに使われると思っていたが、考え方や生き方でも使われる言葉だと分かり、勉強になりました」「日本人の考え方や文化を見ることができ、将来への参考になりました」といった意見を聞いた鈴木さんは、「ハノイ大の学生は、真剣に日本語を勉強し、ワークショップの間も上手に話していました。彼らの意見を聞く中で、私たちが当たり前に使っている言葉でも、違和感を持つ人がいるとあらためて実感し、これまで以上に言葉一つひとつにこだわっていきたいと思いました」と振り返ります。
ワークショップで交流を深めた学生たちは、ハノイの観光地なども見学。尾前さんは、「ベトナムにはこれまでまったく縁のない生活を送ってきましたが、そんな国にも自分たちの番組を見て何かを感じてくれる人がいて、喜びと同時に番組制作への責任を感じました。滞在期間中もカメラを回していたので、編集してハノイ大学でお世話になった先生方や学生に届けたい。今後はもほかの4大学とも交流を深められたら」と充実した表情を見せていました。また稲見さんも「私たち国際交流基金は、文化交流の要諦は「人に始まり人に終わる」であり、人の付き合いが最終的な国際相互理解に繋がると考えています。東海大学の学生には、継続してベトナムを訪問することで、関心を深めてもらい、現地の学生たちと何か一緒の企画を考えたり、将来の仕事でベトナムの情報が知りたかったときにすぐに聞けるような関係を築いたりしてほしい」と期待を寄せました。
帰国した学生たちは、4月21日に湘南キャンパスでテレビ班の仲間たちに向けた報告会も開催。指導に当たる五嶋正治教授は、「教材で活用していただいているドキュメンタリー番組には、日常会話の日本語と、スタジオで録音されたナレーションとして整理された日本語で構成されています。日本語を学ぶ海外の学生さんたちにとっては、文化を理解するドキュメンタリー番組としてだけでなく、日本語の教材として非常に高い評価をいただきました。今回の訪問では、国際交流基金の皆さまをはじめ、多くの方々の協力もあり、学生たちは非常に貴重な経験を積めました。今後の活動や社会に出てからもこの経験を生かしてほしい」と話しています。