文学部英語文化コミュニケーション学科 成田広樹 准教授(専門:理論言語学)が研究代表を務めるGrammarXiv(グラマカイブ)プロジェクトが、2021年度新規科研費事業に2件採択されました。
・基盤研究(B):「日英語の省略構造の統合的解明に基づく理論横断的オープンアクセス・データベースの創生」(課題番号16K02779)
・挑戦的研究(萌芽):「再現性を担保した容認性判断のアーカイブの開発」(課題番号21K18367)
成田広樹 准教授:言語は広範な機能を伴う多元的複雑系です。個人性と社会性、規範性と創造性、生得性と学習性、普遍性と多様性、領域固有性と汎領域性、等々の様々な両極的特性が渾然一体となり機能するのが言語の特徴です。よって、人間の言語知識(文法)の総合的解明を目指す理論言語学は、複雑に絡み合う要素間の依存関係を考慮しながら包括的に研究が行われるべきです。
- 音声(あるいは手話/サイン) ←→ 2. (統辞)構造 ←→ 3. 意味(思考)
- ヒト(ホモ・サピエンス)の(生物)種固有性 ←→ 5. 他生物との進化的連続性
- 遺伝的賦与物としての先天性(生得性) ←→ 7. 後天的学習の必要性
- 通言語的な普遍性/不変性 ←→ 9. 各自然言語の個別性・変異性
- 言語に特化した領域固有性 ←→ 11. 汎領域性(他の認知能力との連動)
- 単純性/極小性(ミニマリストプログラム) ←→ 13. 複雑性
- 使用状況から切り離された静的知識 ←→ 15. 実時間上の動的活動
しかし、実際は分野の細分化が進みすぎ、「成果(あるいはその積み上げ)の散逸」とでも言うべき状況が様々なレベルで生じています。また、可視的な形で成果が集積されていないことから、隣接分野との間で深刻なミスマッチが生じています。言語資料の質的・量的網羅性や計算機に実装可能な理論洞察を求める自然言語処理研究者にとっても、実験デザインに資する適切な粒度の理論仮説を求める実験言語学者にとっても、教育効果の高い文法記述の選定を求める応用言語学者にとっても、適切な理論とのマッチングが不可能な状況は甚大な機会損失です。
このような問題に対し、GrammarXivプロジェクトは、言語事実・理論に関するオープンアクセス・データベースGrammarXiv(グラマカイブ)を構築し、多角的に発展させることで、これらの問題を解決し、下の図に示すような理論言語学および言語研究諸分野における知の共有と発展的統合を目指します。
※プロジェクトの進捗について、また学科HPでも取り上げていきます。乞うご期待!