知のコスモスシンポジウム「甘い、だけじゃないお菓子・文化・歴史」を開催しました

文学部歴史学科西洋史専攻と文化社会学部ヨーロッパ・アメリカ学科では、1月13日に湘南校舎で知のコスモスシンポジウム「甘い、だけじゃないお菓子・文化・歴史」を開催しました。本学の異なる学部に所属する教員が「お菓子」をテーマに、各自の研究対象や関心のある分野について講演したものです。オンライン併用で開催し、教員や学生、学外の市民など約110名が参加しました。

初めに、丸山雄生准教授(ヨーロッパ・アメリカ学科)が「ヴィーガニズムとお菓子」と題して、世界中で日々増加しているヴィーガンの特徴や目的、ヴィーガン用代替肉など少数だったヴィーガン市場が一般化されつつある現状を紹介するとともに、ニーズが高まった背景を解説。「ヴィーガンは“肉を食べない”という単純な食生活のように思われがちですが、動物福祉や環境問題、消費者倫理などさまざまな背景を持っており、実は複雑な思想を持ちます」と語った後、ヴィーガンとお菓子の関係性について、「ヴィーガンの食事については、近年でこそ専用メニューや食品を目にしますが、“配慮が必要で面倒なもの”という認識もあります。一方、お菓子には気軽で手に取りやすいヴィーガン食品としての役割があります。これは、ヴィーガニズムの政治性を隠し、ファッションフード的な流行へと単純化する流れとして理解できます」とまとめました。

続いて、菅原未宇准教授(歴史学科西洋史専攻)が「近世イギリスにおけるティータイムの成立」をテーマに、17世紀のイギリスでのお茶の楽しみ方について講演。1630年代にオランダ経由で薬として流通が始まった紅茶の歴史について、「東インド会社による茶葉の献上やポルトガルからきたチャールズ2世妃キャサリンが宮廷内で喫茶の習慣を持ち込み、上流・中流階級の朝食時の飲料として定着していきました」と語りました。また、社会的地位を誇示するために茶葉やカップが扱われ、女性同士が相互に訪問してティーテーブルで社交していた時代を解説するとともに、一般庶民への普及について語り、「お茶は小分け販売や輸送の容易さにより、地域を問わず幅広い階層の手にわたることが可能になりました」とまとめました。

最後に、田口かおり准教授(教養学部芸術学科)がオンラインで「チョコレートの彫刻、キャンディの山~現代芸術を見ること、そして残すこと~」と題して講演。美術作品の保存修復や現代美術の観点から、芸術とお菓子の関係性について解説し、「現代美術は見て鑑賞するだけではなく、作者の意図や作品と自分の関係を考えることが求められます。作品の中には本物のお菓子を使ったものも多くあります」と話しました。その後、お菓子でできた芸術作品の事例を紹介し、「変容過程にある作品はいかに残し、公開・修復していくかが問われるとともに、コンセプトを尊重することが大切です」と話しました。