海洋科学博物館の学芸員らが新種の深海魚を発見しました

東海大学海洋科学博物館学芸員の冨山晋一さんと海洋学部水産学科の髙見宗広講師、福井篤教授の研究グループがこのほど、深海性アシロ科魚類のイシフクメンイタチウオBassozetus robustusに関する分類学的混乱を解決し、これまで本種と混同されていた2種について新種Bassozetus trachibranchusおよびBassozetus squamosusとして報告。研究成果をまとめた論文が3月16日に、『Ichthyological Research』(日本魚類学会)のオンライン版に掲載されました。

深海性のアシロ科フクメンイタチウオ属魚類は従来14種とされており、そのうちイシフクメンイタチウオは西太平洋、インド洋および大西洋に広く分布すると考えられてきました。しかし、本研究グループが日本、アメリカ、ニュージーランドなどの11研究機関(海洋科学博物館を含む)に所蔵されている計47標本を精査した結果、本種のほかに未知の2種が混同されていたことが判明しました。3種の形態的特徴はよく似ていますが、頭長に対する眼径の比率、鰓弓(呼吸器官である鰓の一部)の表面構造および横列鱗数(肛門から前上方へ背鰭の基底まで並ぶ鱗数)などに基づいて識別されます。論文では2新種をそれぞれBassozetus trachibranchus(英名:Rough Gills Assfish)およびBassozetus squamosus(英名:Scaly Assfish)と命名・記載すると共に、イシフクメンイタチウオについても今後の分類学的混乱を避けるために再記載しています。Bassozetus trachibranchusは西大西洋の水深約1200~2000m、Bassozetus squamosusは西インド洋と南西太平洋の水深約1600~2800m、そしてイシフクメンイタチウオは日本の領海を含む西太平洋の水深約800~1900mに生息し、各種の体長は少なくとも423 mm、505 mmおよび525 mmに達します。なお、本研究グループが報告したフクメンイタチウオ属の新種は、2016年のBassozetus mozambiquensisと2018年のBassozetus nielseniに続き計4種となりました。

冨山さんは、「これまでに発見されている種との違いを論理的に説明するには細かい調査が必要であり、とても時間がかかります。しかし、様々な種の存在を正しく理解することは生物分類学の発展に貢献できるので、今回こうした成果を得られてうれしく思います」とコメント。また、「海洋学部の研究室と協力し、清水キャンパスの図書館を利用できる環境は、研究に取り組むうえでとても恵まれており、学園のスケールメリットだと感じています」と語っています。

①新種「Bassozetus trachibranchus」の標本
(体長355mm)
②新種「Bassozetus squamosus」の標本(体長360mm)
③再記載した既知種「Bassozetus robustus」
(標準和名:イシフクメンイタチウオ)