
医学部医学科の栗田宜明教授(基盤診療学系衛生学公衆衛生学領域)と福島県立医科大学の研究者らが、日本の一般住民を対象とした大規模調査データを用いて、腰痛による日常生活への障害度を評価する国際的指標「オズウェストリー障害指数(Oswestry Disability Index version 2.1a」(ODI2.1a)の日本人における基準値(国民標準値)を初めて明らかにしました。その成果をまとめた論文が4月28日に、アメリカ脊椎外科領域の専門誌『The Spine Journal』に掲載されました。
ODIは、「歩行」「座位」「睡眠」「仕事」「身の回り動作」といった10項目の質問について患者に6段階(0~5点)で回答してもらい、合計点で腰痛による障害度を評価する国際的な指標の一つです。国内では日本語版のODI2.1aが用いられていますが、解釈の基準となる一般的な日本人のデータは十分に把握されておらず、日本人に適した基準値の整備が求められていました。栗田教授らは、2023年に日本腰痛学会が全国の20~90歳の一般住民5000人をランダムに選んで訪問調査した「腰痛に関する全国調査」のデータを解析。ODI2.1aが障害度を測定する尺度として適切に評価できるかを調べる計量心理学的評価を行うとともに、一般の日本人における国民標準値を推定しました。
その結果、ODI2.1aは日本人において適切な性能を備えた単一スコアの評価尺度であることを確認。さらに、腰痛を有する人のODI平均値は20.23(標準偏差16.42)であり、腰痛の持続期間の長期化・慢性化に伴ってODI値が上がり(障害度が高くなる)、高齢になるほどODI値が高くなる傾向も示されました。栗田教授は、「ODI2.1aが腰痛の障害度を正しく反映した信頼できる測定ツールであると示されました。この成果により、整形外科医や患者さんは、自身の障害度や治療効果を一般的な日本人の水準と比較しながら客観的に把握できるようになります。今後は脊椎疾患診療やリハビリテーション、疫学研究、臨床研究において、日本人に適した評価基盤として広く活用されることが期待されます」と意義を説明します。
栗田教授は東京大学医学部を卒業後、三井記念病院や福島県立医科大学附属病院などを経て2026年度に本学科に着任。内科医として診療に携わる中で得た疑問を解決するため、健康関連の多様な事象の頻度や分布を調査・分析する疫学の手法を活用しています。「診断の妥当性や治療の効果をはじめ、疾患に対する患者さんの思いや、医師がどのように対応すると患者さんの治療意欲が高まり、治療効果が向上するかといった、把握しにくい情報の“見える化”にも取り組んできました。こうした研究の成果を、臨床はもちろん、本学科が目指す“良医”の育成にも生かしていきたい」と話しています。
※『The Spine Journal』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://www.thespinejournalonline.com/article/S1529-9430(26)00129-4/