医学部医学科の渡辺教授らが非病原性アメーバの腸管感染モデルを確立しました

医学部医学科基礎医学系生体防御学領域の渡辺恒二教授(総合医学研究所)と国立健康危機管理研究機構国⽴感染症研究所、同機構国立国際医療センターの研究者らがこのほど、ヒトに寄生する非病原性アメーバの腸管感染モデルを確立し、免疫反応の評価に成功。その成果をまとめた論文が8月7日に、学術誌『PLoS Neglected Tropical Diseases』に掲載されました。

病原性を持つ単細胞の寄生虫である赤痢アメーバ(病原性アメーバ)の感染によって発症する赤痢アメーバ感染症は、大腸炎や肝膿瘍を引き起こし、重症化すると命にかかわる場合があります。研究グループは、ヒトの大腸内から病原性アメーバのみを取り出して培養する研究に取り組む中で、日本では感染が稀な非病原性アメーバを発見。国内で初めてその培養に成功しました。さらに、2種の培養アメーバを腸管に感染させたモデルマウスの比較実験により、病原性アメーバは非病原性アメーバに比べて、宿主側(マウス)の免疫を誘導する力が大きいことなどを明らかにしました。渡辺教授は、「便からアメーバだけを分離して試験管内で培養するという地道な研究の継続が、病原性の異なるアメーバの免疫反応を比較・解析できる研究基盤の確立につながりました。この成果は、赤痢アメーバ感染症の病態の理解をはじめ、病原性に関わる分子の発見や、予防・治療法の開発に寄与する可能性があると考えています」と語ります。

感染症を専門とする医師として2006年度から国立国際医療センターで診療に従事していた渡辺教授は、09年度にHIVウイルスの研究を目的に進学した熊本大学大学院医学教育部で、当時は未開拓の分野だった赤痢アメーバ感染症に注目。以後、同感染症の第一人者として診断・治療体制の確立に尽力してきました。23年11月には、AI に使われる情報の提供を目指して構築した診療支援サイト「赤痢アメーバ・リファンレンス」をオープン。また、国立健康危機管理研究機構が発行する学術誌『GHM』の23年12月号に掲載された赤痢アメーバに関する論文の引用回数が評価され、「GHM High Citation Award 2025」を受賞しています。

渡辺教授は、「臨床を通じて得た疑問を基礎研究で解決するための新たな挑戦として、2024年から本学に着任しました。東海大と熊本大が締結した包括的連携協定を通じて、医学部プロジェクトの一環として展開している赤痢アメーバに関する共同研究も、有用な成果が得られつつあります。今回確立した非病原性アメーバの腸管感染モデルをはじめ、これまで積み重ねてきた成果を病態の解明や治療法の開発へと発展させ、社会に貢献したい」と話しています。

※『PLoS Neglected Tropical Diseases』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://journals.plos.org/plosntds/article?id=10.1371/journal.pntd.0014507