
医学部医学科の佐藤正人教授(外科学系整形外科学領域)が10月5日に東京都中央区のベルサール八重洲、19日に大阪市北区のミーティングスペースAP大阪駅前で開催された市民公開講座「ひざの痛み相談室 変形性膝関節症とは? ~原因から最新治療、未来の医療まで~」(主催:日本再生医療学会、共催:日本整形外科学会)の講師を務めました※。5日はオンライン併用で行われ、患者や家族、医療従事者ら多数が参加しました。
第1部では、佐藤教授が「ひざの痛み(変形性膝関節症)の最新知識」をテーマに講演。国内で要支援・要介護となる原因の26.3%が運動器疾患で、その一つである変形性膝関節症の患者は2,530万人にのぼるといった現状を紹介し、原因や症状、治療法を説明しました。また、診療ガイドラインで有用とされているヒアルロン酸治療(精製ヒアルロン酸ナトリウム関節内注射)が関節の機能を改善するメカニズムや、患者を対象に実施する臨床研究の概要について解説。「ヒアルロン酸治療の効果と、患者さんの年齢や性別、既往、持病などとの関連を詳細に調べることが、将来ヒアルロン酸治療と比較して、新たな治療法がどれくらい効果的なのかが分かりやすくなり、適正評価につながります」と意義を語りました。最後に、厚生労働省が承認していない自由診療で行われている細胞療法・再生医療や、有効性・安全性が確立されていない治療に対する注意を呼びかけました。

第2部では、佐藤教授と共に変形性膝関節症の患者さんが登壇。診断に至る経緯やヒアルロン酸治療の選択理由、治療頻度、治療後の膝の状態といった体験を振り返り、「好きなサッカーを長く続けたいので、主治医と相談しながらライフスタイルに合わせた治療法を賢く選択したい」と語りました。参加者からは、治療を選択する際の留意点や、ヒアルロン酸の関節投与時の痛み、副作用といった質問が寄せられ、登壇者が丁寧に回答しました。
最後に佐藤教授が、「医師の使命は科学的根拠に基づいた安全で効果的な治療の選択肢を一つでも多く用意することであり、今日ご紹介したヒアルロン酸治療に関する臨床研究は、そのための大切な一歩です。ヒアルロン酸治療の効果を客観的に示すことで、新しい再生医療の正しい位置づけも可能になり、患者さんが安心して治療を受けられる未来につながると信じています。膝の痛みをあきらめる必要はありません。この会が、患者さん一人ひとりにとって次の一歩を踏み出すきっかけになればと願っています」と結びました。
※この講座は、佐藤教授が研究代表者を務める「変形性膝関節症患者を対象とした精製ヒアルロン酸ナトリウム関節内注射の治療の有効性と安全性を評価する臨床研究」(OAK-HA研究)の一環で、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて実施されました。