大学院理学研究科数理科学専攻の与座英之さん(2年次生)が、3月2日、3日に東京学芸大学で開催された日本フットボール学会の21st Congress奨励賞セッションで、日本フットボール学会奨励賞(ポスター発表)を受賞しました。同学会はフットボールに関する科学的研究の成果をプレーヤーや指導者、支援団体などに還元することを目的に活動しており、同賞は各年度の学会大会で優秀な研究発表を行った若手研究者に授与されます。
与座さんの発表タイトルは、「統計的な分析を用いた日本と強豪国の特徴の比較」。FIFA(国際サッカー連盟)が公開している「Post Match Summary Reports」から、2022年「ワールドカップ カタール」、2023年「U-20 ワールドカップ アルゼンチン」、同「U-17 ワールドカップ インドネシア」のデータを用いて、強豪国と日本の試合の特徴を統計的な分析を通して確認。選手の走行距離数や枠内シュート、ボール支配など複数項目のデータに着目し、日本にこれから必要な強化項目を探ることを目的としました。さらにアルゼンチン対日本、フランス対日本、韓国対日本の試合については着した20項目のデータを統計的な手法を用いて4つの指標に要約。ある数値が高いとメリハリある走行ができていることや、別の数値が高いとボールタッチの行動に対してパスの割合が大きいことなどを解析し、攻撃指標×走行指標およびパス指標×走行ギャップ指標の得点の散布図を示しました。
「他国はフル代表と若手世代の散布図にほとんど差がないのに対して、日本の若手世代の攻撃指標や走行指標の値の分布は小さくなっており、試合における戦術のバリエーションが固定されていることが伺われます。トップチームは対戦相手に応じて戦術を工夫していることを考えると、若手世代での戦術のバリエーションを増やすことが今後の課題になるのではないか」と与座さん。「特に強豪国であるアルゼンチンとフランスのように走行のメリハリの強度を上げることが必要だと感じました」と手応えを語りました。
自身はプレーヤーの経験こそないものの、中学生のころから監督目線でサッカーの試合を見ることが好きで、中でも元・横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督の戦術が好きだったと話します。「スポーツ的な考察が多くを占める同学会では、数理統計学の観点からフットボールを論じた発表は珍しく、フィジカルコーチやクラブチーム、大学サッカーの関係者の方たちが興味を示してくれて、アドバイスや意見などを直接、聞けたことは貴重な経験でした。サッカーへの数学的アプローチを深められれば、もっと面白くなると思います。いずれはどこかのチームの戦術として私の研究成果が用いられたらうれしい」と今後の抱負を話しています。