理学部化学科の関根嘉香教授がこのほど室内環境学会の「2025年学会賞」を受賞し、12月2日から5日まで北九州国際会議場で開催された同学会の学術大会の受賞式で賞状と盾が授与されました。同学会は、温度や湿度、空気質といった室内環境に関する研究の発展と実用化を目指す学術団体であり、今大会は「室内環境分野に架ける橋」をテーマにシンポジウムや研究発表が行われました。

関根教授は、「ヒト皮膚ガス測定を基盤とする室内環境学研究の新領域の創生」が評価されての受賞となりました。人の皮膚から空気中に放散される微量の生体ガス「皮膚ガス」について長年研究し、検出した成分から心身の健康状態を測るウェアラブルデバイスの開発などを行う関根教授。先進事例が少ない研究領域を開拓し、室内環境の向上につなげる数々の取り組みが評価されました。これまでの研究を振り返り、「今までは空気汚染の要因として人の体臭が挙げられることがなかったのですが、調べていくうちに人の皮膚から発生するガスが室内環境に大きく影響することが分かりました。私が研究を始めたころは専門の研究者がほとんどいない状況で、先進事例も少なく手探りで研究を進めてきました。近年、世間一般の認知も広がり、検出技術が社会実装されるケースも増えています。研究の意義や存在を認めていただけた一つの証だと思うので、とてもありがたく感じています」と話しました。
また、自身の研究室に所属する学生の努力にも触れ、「私の研究室では最初に“何でも好きなテーマで研究してみよう”と伝えています。学生たちはカツオのたたきやイカなど、好きな食べ物を食べたときの皮膚ガスを調査することから始め、最終的には皮膚ガスが発生する原理といった科学的根拠を明確にする研究に取り組んできました。そうした積み重ねが、皮膚ガス研究をここまで大きくしてくれたので、学生たちの頑張りがあってこそいただけた賞だと感じています。現在は医療や食品、自動車といった産業界への技術提供や、他学部との共同プロジェクトなど、幅広い研究に取り組んでいます。人は一日の90%以上を室内で過ごすと言われているため、快適な室内環境の実現に寄与できるよう活動を続けていきたい」と語っています。