代々木キャンパスで12月18日、To-Collaboシンポジウム「インバウンド観光の推進による地域の活性化」を開催しました。To-Collaboプログラムの大学推進地域観光プロジェクト「広域連携による観光・地域活性化の推進」(研究代表:松本亮三観光学部教授)の一環として、湘南・代々木キャンパスの観光学部観光学科、清水キャンパスの海洋学部環境社会学科、熊本キャンパスの経営学部観光ビジネス学科、札幌キャンパスの国際文化学部地域創造学科による各地の取り組みを紹介し、学生や教職員、地域住民ら約100名が参加しました。
開催にあたり、山田清志学長が、「来年度は観光学部設立8年目になりますが、外国人観光客の増加から、観光産業は世間でも注目されています。先日行われた日露首脳会談では、安部首相が提案した経済プランの中に”観光”も大きな柱として掲げられていました。今日は、”インバウンド”という視点でお集まりいただいた皆さんに新たな気づきを発見してもらえればと思います」とあいさつ。続いて、松本教授が、「日本の政治社会や経済機能が都心に集中しすぎているため、地方都市の存続が危ぶまれています。そうした状況を救うため、経済的に自立した地域社会をつくる必要があり、その一役を担うのが観光による地域振興です。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催をきっかけに増加している外国人観光客に対する効果的な接遇と観光資源の開発を目指して、各校舎で実施してきた活動を皆さんと共有させていただきたい」と趣旨を説明しました。
基調講演には株式会社リクルートライフスタイル 地域創造部長・じゃらんリサーチセンター長の沢登次彦氏を招き、「これからの日本に必要な戦略について」をテーマにお話しいただきました。沢登氏は、日本人と訪日外国人それぞれの観光宿泊旅行の最新動向を紹介しながら、観光を基幹産業としていく地域がなすべきことについて解説。「最近は仕事や近所づきあいで義理のお土産を買う人が少なくなり、家族や恋人など大切な人や自分用に買う人が多いため、多少値段が高くても質のいいものが売れます。自治体は、魅力的な土産物をつくる企業を育てなければいけません」など、観光産業を活性化していくうえでの具体案を挙げました。
続いての活動報告では、観光学部観光学科の屋代雅充教授が「訪日観光の丹沢湘南地域への誘致―丹沢湘南地域におけるインバウンド観光推進のための情報発信」と題し、「東京都心部の駅に大山のパンフレットは置いていなかったのですが、伊勢原市の観光インフォメーションセンターには約70カ国の外国人観光客が昨年度訪れています。訪日後にどこを観光するか決めている人が多く、友人からの口コミやSNSを有効活用していることも分かりました」と報告。海洋学部環境社会学科の東惠子教授は、「クルーズ客船インバウンド観光」をテーマに、「清水港は富士山の世界遺産登録以降、欧米を中心に外国人観光客が多く利用しています。ただ、三保の松原は外国人観光客のマナーについて地元住民と折り合いがついていない状態。生活環境とのバランスが今後の課題です」と述べました。経営学部観光ビジネス学科の宮内順教授は、「今年4月に発生した熊本地震後、安全面への不安やアクセス制限によりインバンド観光客が激減したものの、7月以降は『九州ふっこう割』のおかげで、国内観光については客足が戻りました。しかし、『ふっこう割』は今年12月までの期間限定であり、今後は滞在プログラムの開発や行政への支援を要請するため『復興DMC』の活躍が期待されます」と提言しました。最後に、国際文化学部地域創造学科の植田俊助教が登壇し、「大都市近郊におけるインバウンド観光推進に向けた地域ホスピタリティー形成・向上実践」と題し、同学科の学生と制作している札幌市南区にある定山渓温泉地域の観光ルートなどを記載した「温泉街周遊マップ」を紹介。「定山渓に宿泊する人は、札幌に宿を取れず寝るためだけに定山渓に来ている人が多いためマップを製作しました。日帰りで行ける範囲で観光の見どころを紹介できるよう工夫しています」と話しました。
その後に行われたパネルディスカッションでは、「インバウンド観光による地域の活性化」をテーマに、コーディネーターの岩橋伸行教授(観光学部学部長)による進行のもと、パネリストとして屋代教授、東教授、宮内教授、植田助教、柳瀬朝木さん(観光学部観光学科3年次生)、鐘下拓人さん(国際文化学部地域創造学科3年次生)、木村早紀さん(海洋学部環境社会学科4年次生)、コメンテーターとして亀山安之氏(一般社団法人川崎市観光協会)が登壇。教員から先に報告された活動内容についてそれぞれの学部生が感想を述べたほか、地域連携の成功事例、課題などについて意見を交わしました。