湘南キャンパスで8月25日に、「第1回サルコペニア・フレイル予防を栄養と運動から考える研究会」を開催しました。サルコペニアは「加齢による筋肉量および筋機能の低下」、フレイルは「加齢により心身が衰え、健康と要介護の中間にある状態」を指し、いずれも健康寿命を縮める要因として社会課題となっています。本研究会では、多角的な視点からサルコペニア・フレイルの予防法を検討しようと、学部の垣根を越えて発足。海洋学部水産学科の清水宗茂教授と健康学部健康マネジメント学科の岡本武志准教授、安田佳代准教授のゼミが一堂に会したほか、大塚製薬株式会社・栄養科学研究所研究員の服部聡士氏を招き、それぞれの専門領域における取り組みについて発表しました。

初めに本研究会発起人の清水教授が開催趣旨を説明し、ゼミに所属する佐々井豪さん(大学院海洋学研究科1年次生)が「デキサメタゾン誘導性筋萎縮に対するイミダゾールジペプチドの抑制効果」と題して講演。同ゼミでは動物性食品に多く含まれ、抗酸化作用や疲労回復効果が報告されている「イミダゾールジペプチド」に着目した研究に取り組んでおり、筋萎縮抑制作用への効果検証実験について報告しました。安田准教授のゼミからは、戸田陸斗さん(大学院総合理工学研究科1年次生)が「サルコペニアに対する酸化ストレスの影響とミトコンドリア品質管理機構の効果」をテーマに発表。戸田さんは工学部生命化学科在籍時から学部を横断して安田准教授 の下で研究に取り組み、現在は伊勢原キャンパスを拠点に骨格筋における酸化ストレスの影響などを研究しています。今回は、モデルマウスを用いた実験で、骨格筋におけるミトコンドリアの構造や機能の変化、さらにその品質管理の重要性について紹介しました。また、岡本准教授のゼミに所属する川村修二郎さん(大学院健康学研究科2年次生)と稲木海聖さん(同1年次生)が登壇し、「身体活動から見た、サルコペニア・フレイル予防への取り組み」と題して、ゼミで定期的に実施している地域住民向けの体力測定会の結果から予防策を提言。早期にサルコペニアの兆候を捉える指標の確立や、日常的なストレッチ運動で柔軟性を高める対応策などを発表しました。最後に、大塚製薬の服部氏が「温故知新:サルコペニア・フレイル予防に向けた食品について」と題し、たんぱく質の摂取と運動療法による筋肉量向上の研究レポートなど、長年の研究成果を現代の社会課題に生かしている多様な事例を紹介しました。
各ゼミの報告後はグループディスカッションを行い、日ごろの研究内容やキャンパスの実験設備、運動と食の組み合わせによる健康増進の可能性など、今後の研究交流に向けて意見を交わしました。清水教授は、「私のゼミでは、さまざまな栄養成分を含んだ水産食品を美味しく安全に食べることで、健康寿命の延伸に貢献することを目指しています。健康学部と海洋学部はそれぞれ異なる研究領域ですが、目指すゴールは同じだと考えています。東海大学のスケールメリットを生かし、学部やキャンパスを超えた研究を推進して社会課題の解決につなげられれば」と話しました。

