大学院生物科学研究科博士課程1年次生の西川大貴さん(総合農学研究所特定助手)が筆頭著者として執筆した研究論文が、生薬学・天然物化学分野の国際学術誌『Journal of Natural Medicines』(Springer社)のオンライン版に掲載されました。本研究は、本学農学部の教員らととともに共同研究として実施してきたものです。

ヒルガオ科植物には、「樹脂配糖体(じゅしはいとうたい)」と呼ばれる特徴的な天然成分が含まれています。今回の研究では、ヒルガオ科植物の一種である「Calystegia hederacea(コヒルガオ)」に含まれる樹脂配糖体に注目し、脂肪を分解する酵素である「膵リパーゼ」の働きを抑える可能性について調べました。試験管内での実験の結果、コヒルガオから得た樹脂配糖体の粗抽出物と3種類の樹脂配糖体(calyhedin類)が、膵リパーゼの働きを抑えることを確認。さらに、コンピュータを用いた解析方法「分子ドッキングシミュレーション」で、これらの成分がリパーゼの働きの中心部分に安定して結合する可能性を認めました。現在は、実験で得られた酵素阻害の強さと、コンピュータ解析による結合の強さの関係についても調査を継続しています。
本研究は、西川さんが農学部バイオサイエンス学科(現・食生命科学科)を卒業後、大学院農学研究科修士課程在学中から続けてきたものです。修士課程では、ヒルガオ科植物の一種であるハリアサガオの種子に含まれる樹脂配糖体が、脂肪分解酵素リパーゼを抑える可能性を示し、天然物化学分野の国際学術誌『Natural Product Research』に掲載されました。今回の研究では、対象となる植物や化合物の種類を広げることで、ヒルガオ科植物由来樹脂配糖体の働きについて、より詳しく明らかにしました。
農学部の食生命科学分野や大学院の生物科学系分野では、食品の機能性研究だけでなく、天然物化学、生薬学、薬学につながる研究も行っています。植物に含まれる天然成分の構造や働きを科学的に解明する研究は、将来的に健康科学や食品、医薬分野への応用につながる可能性があります。西川さんが所属する食品機能科学研究室(指導教員=安田伸教授)では、これまでに天然物化学研究室(副指導教員=小野政輝教授)、食品安全性学研究室(副指導教員=平野将司准教授)、食品バイオ化学研究室(指導教員=木下英樹准教授)、生物化学研究室(指導教員=米田一成教授)とともに「食と健康」をテーマにした共同研究を幅広く推進しています。
西川さんは、「農学部で学んだ食品機能科学や天然物化学の研究を大学院でさらに発展させることができました。植物に含まれる成分の新しい可能性を明らかにし、薬用植物や食と健康に役立つ研究へつなげていきたい」と話しています。


▶本研究論文はこちらから見ることができます(本学のオープンアクセス加速化事業の支援により、すべての人が論文を無料で見ることができます)。
https://link.springer.com/article/10.1007/s11418-026-02017-6
Nishikawa H, Hirano M, Kinoshita H, Yoneda K, Ono M, Yasuda S. Inhibitory effects of three genuine resin glycosides from Calystegia hederacea on in vitro porcine lipase assay and in silico docking simulation analysis. J Nat Med. 2026 Mar 9. doi: 10.1007/s11418-026-02017-6.
▶過去の研究論文(要旨のみ閲覧できます)
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14786419.2025.2495162
Nishikawa H, Sato R, Misuda N, Furumura H, Miyasaka T, Hirano M, Kinoshita H, Yoneda K, Ono M, Yasuda S. In vitro lipase inhibition and in silico modelling analysis of the resin glycosides from the seeds of Ipomoea muricata and pharbitin from Pharbitidis Semen. Nat Prod Res. 2025 May 8:1-8. doi: 10.1080/14786419.2025.2495162.