生物学部の岩井宏暁教授らの研究グループが植物の維管束再生を促す活性酸素種の働きを解明しました

生物学部生物学科の岩井宏暁教授と帝京大学、大阪大学、東京理科大学の研究グループがこのほど、植物の茎が傷ついた際に発生する「活性酸素種」が、損傷した維管束を再生させる初期段階で重要な役割を果たしていることを明らかにしました。2025年4月から本学科に着任した岩井教授は、以前所属していた筑波大学で、大学院博士課程の大場裕介氏(現・帝京大学博士研究員)を指導。研究テーマの設定や初期の実験設計に携わり、本学科着任以降も論文指導などで研究に携わってきました。この論文は、9月24日付けで日本植物生理学会が発行する国際学術雑誌『Plant and Cell Physiology』に掲載されました。

植物は昆虫による食害や強風などで茎が傷つくと、傷口周辺の細胞を分裂させ、損傷した組織を再生します。傷ついたことを植物体全体に伝えるシグナルとして活性酸素種が働くことは知られていましたが、維管束の再生にどのように関わるのかは明らかになっていませんでした。そこで、植物研究の「モデル植物」とされているシロイヌナズナをマイクロナイフで傷つけて実験。活性酸素種の一種である「過酸化水素」を減少させるヨウ化カリウムを傷口に添加すると、維管束の再生に必要な形成層細胞の増加が抑えられ、過酸化水素を与えると増加することを確認しました。さらに、活性酸素種を生成する酵素「RBOHD」を欠損させた植物でも形成層細胞の増加が抑えられたことから、活性酸素種が維管束再生の初期段階に必要であることを突き止めました。植物の傷が治る仕組みは、異なる植物をつなぎ合わせる農業技術「接ぎ木」の根幹となる現象で、この研究が進むことで接ぎ木の活着を促進させる条件の解明につながる可能性があります。

岩井教授は、「活性酸素種は過剰になると細胞に障害を与える一方で、植物の成長や発生に重要な役割を果たすことも分かっています。今回、傷ついた植物が自ら組織を再生する際にも重要な働きを果たしていると示すことができました。東海大学では、私の研究室の学生が接ぎ木した植物の接合部分の強度を測る実験を進めているので、活性酸素種と維管束再生の関係をさらに詳しく調べていきたい」と話しています。