公開講座ヒューマンカフェ(道民カレッジ連携講座)「あなたの知らない睡眠の世界」を開催しました

札幌キャンパスでは6月24日(日)に、紀伊國屋書店札幌本店インナーガーデンにて東海大学公開講座ヒューマンカフェ(道民カレッジ連携講座)「あなたの知らない睡眠の世界」を開催しました。生物学部の寺尾晶教授が講師を務め、第1部「快眠を得る方法を学ぶ」、第2部「睡眠のメカニズムを学ぶ」の2部構成で実施。幅広い年代の市民ら100余名の参加があり、睡眠を巡る多様な話題に皆熱心に聞き入っていました。最後の質疑応答コーナーでは参加者からたくさんの質問が寄せられたほか、終了後も寺尾教授を囲んで語り合う様子が見られました。

寺尾教授はまず、「快眠を得る方法を学ぶ」と題した第1部のはじめに、睡眠には「体の眠り」のレム睡眠と「脳の眠り」のノンレム睡眠の2種類があり、この2つの睡眠が約90分周期で交互に繰り返されることを紹介。「ノンレム睡眠はその深度により、ステージ1~4に分けられるが、最も深いノンレム睡眠ステージ4に到達できるのは眠りはじめの第1サイクル。これは『黄金の90分』と呼ばれており、この90分間に熟睡できるか否かで『眠りの質』が決まります」と説明。「『黄金の90分』をしっかり深く眠ることができれば、脳のコンディションが整い、目覚めがスッキリして日中の眠気も解消されます。まさに、睡眠の質は覚醒の質に直結するのです」とそのメリットを挙げ、「最高の睡眠を確保することで日中のパフォーマンスを最大化させましょう」と語りました。また、日本人の5人に1人が悩んでいる不眠症については、その原因はストレスをはじめ、生活リズム、不安や抑うつ、アルコールやたばこ、体の痛みや痒みなど人により様々であること、睡眠不足症候群、むずむず脚症候群、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーなどの過眠症では、睡眠不足が常態化した「睡眠負債」が問題となることを紹介しました。最後に快眠をもたらすための日常生活の実践法として、「眠るための脳スイッチ入れる」「眠りのスケジュールを設定する」「規則正しい3度の食事、適度な運動習慣」など12のポイントについて詳しく解説しました。

第2部では、「睡眠のメカニズムを学ぶ」をテーマに、睡眠と覚醒の切り替えに重要な役割を果たす神経伝達物質「オレキシン」を軸にした研究を分かりやすく紹介しました。まずはスタンフォード大学で活発に取り組まれていた家族性に発症する犬の「ナルコレプシー」研究について動画を交えて説明。寺尾教授は、「10年にもおよぶ研究の結果、1999年に家族性のナルコレプシー犬には『オレキシン』という神経伝達物質に対する受容体に変異があることが突き止められました。この発見を契機にナルコレプシー病の患者の脳を調べるとオレキシン神経細胞が脱落していたため、脳脊髄液中のオレキシン濃度を調べることでナルコレプシー病の早期診断が可能となりました。」とレクチャーしました。続いてこれらの研究背景を元に進められてきたナルコレプシー治療薬の創製研究についても語り、「ナルコレプシー治療薬としてオレキシン受容体作動薬が創出されれば、ナルコレプシー病の根本的な治療法となり、ナルコレプシー患者さんのクオリティー・オブ・ライフが改善されるでしょう」と話を締めくくりました。

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