応用化学科の淺香教授が無機マテリアル学会の学術賞を受賞しました

工学部応用化学科の淺香隆教授が6月4日に、第61回無機マテリアル学会の学術賞を受賞しました。この賞は、無機マテリアル分野の研究に長年にわたって尽力し、顕著な功績を残した研究者に贈られるものです。淺香教授は、「イオン化コントロール法によるカルシウムを含む無機―多糖類複合ゲルの作製」に関する研究で選出されました。

淺香教授は1994年に工学部動力機械工学科に着任した当初から、菊川久夫教授(現・医用生体工学科)とともに骨の自己修復に役立つ素材の研究を展開してきました。骨折などで骨が損傷した場合、ほかの場所の骨を移植する治療法がありますが、淺香教授らはヒトが本来持つ治癒力を促進することを着想し、骨の主成分の一つである水酸アパタイトを欠損部分に導入するために、粉末の水酸アパタイトに含まれるカルシウムで固まる性質を持つ、人工血液にも使われるアルギン酸ナトリウムとの半固形複合ゲルをイオン化コントロール法という新しい手法により数時間で作製することに成功しました。また、合成時の温度や時間を調節して凍結乾燥技術(フリーズドライ)を導入することで、大腿骨の骨頭部などにあるクッション性の高い海綿骨に類似したものなど、さまざまな構造の乾燥ゲルを作ることも可能にしました。近年では、アルギン酸塩を使って流動食の粘度を調整する研究にも取り組んでおり、患者の病態に応じて粘度を変えたオーダーメード流動食の開発を進めています。

受賞を受けて、「菊川教授や学生たちをはじめ多くの人とともに20数年間にわたってコツコツと続けてきた研究が評価され大変うれしく思います。この研究は、菊川教授の機械工学的な視点と私の化学的な視点が融合して生まれたもので、新しい発見は既存の学問領域をこえて連携することが重要であるとあらためて実感しています。研究者としての私のスタートは、東海大学大学院で学んだ当時に、さまざまな分野の先生方や留学生、仲間と接し、アカデミックな雰囲気の中で多くの価値観に触れたことにあります。私自身が経験した原点を大切に、『自ら考え、行動できる学生』を一人でも多く輩出できるよう、これからも力を尽くしていきたい」と話しています。