海洋研究所の久保田客員教授が「日本海洋学会宇田賞」を受賞しました

海洋研究所の久保田雅久客員教授(海洋学部元教授)がこのほど、2020年度「日本海洋学会宇田賞」を受賞しました。同賞は海洋物理・水産海洋学者で本学海洋学部でも教鞭をとった宇田道隆元教授の名前を冠し、顕著な学術業績を挙げた研究グループのリーダー、教育・啓発や研究支援において功績を挙げた研究者など、海洋学の発展に大きく貢献した会員が表彰されるものです。久保田客員教授は、「衛星海面フラックスプロダクト J-OFURO の開発と大気海洋相互作用研究の推進」の研究が評価され、選出されました。9月に日本海洋学会秋季大会で表彰を受ける予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により延期となり、賞状と記念のメダルが郵送で授与されました。学会大会は11月にオンラインで開かれる予定です。

久保田客員教授はこれまで、文部科学省の科学研究費助成事業重点領域研究に採択された「大陸規模の水・熱エネルギーフローの解明」の海洋班の研究代表者として、人工衛星による海面観測について研究。海面観測は現場での調査に船が必要であり、広範囲で密度の高いデータを取得することが困難とされていた中、研究グループとして世界各地における海面と大気の間の熱の移動を宇宙から推定する手法を研究開発しました。また、観測したデータをさまざまな分野での研究に生かしてもらおうと、全国の研究者の協力を得て2000年代初頭に「Japanese Ocean Flux Data Sets with Use of Remote Sensing Observations(J-OFURO)」プロダクトを構築し、データの提供を開始。現在は第3世代の「J-OFURO3」を世界最先端の衛星海面フラックスプロダクトとして提供を続けています。

今回の受賞について久保田客員教授は、「宇田先生はご存命のころを存じ上げており、私が理想とする研究者の一人です。そのお名前を冠した賞をいただくのはとても光栄なことであり、このご縁をうれしく思います。研究を始めたころはドイツやアメリカの研究機関と切磋琢磨して研究開発を行いましたが、その国際間の競争が我々にとって大きな励みとなりました。私たち日本の研究グループがここまで研究を進展させることができたのは、本学卒業生をはじめとする多くの若手研究者が研究開発に参画するとともに、その活動を引き継いでくれたからにほかなりません。また、今回の表彰では、大学院生時代に『海洋若手会』を立ち上げたことや、大気海洋相互作用に関連する研究集会を長年主導してきたことも評価していただきました。若いころから研究機関の枠をこえて横のつながりを持つことは、若い研究者にとって視野と人脈を広げて刺激を受ける貴重な機会です。ただ、研究集会などを主催しても参加者がいなければ話になりません。その点で、研究集会や海洋若手会に、今まで参加された多くの人がこのメダルのいろいろな部分に貢献していますし、この宇田賞の受賞を喜ぶ資格があると思います。自分の貢献はわずかであることを謙虚に受け止めるととともに、非常に多くの人が貢献した宇田賞を代表して受賞したことを誇りに思います」と述べています。