教養学部人間環境学科自然環境課程の北野忠教授の研究グループが、これまで日本では生息が確認されていなかった水生昆虫の「Spercheus stangli」を沖縄県・西表島で発見し、標準和名として「コブオニガムシ」を提唱しました。また、コブオニガムシが属する「Spercheidae科」というグループ自体がこれまで日本で未記録であったため、「オニガムシ科」「オニガムシ属」という科名・属名についても新たに標準和名を提唱。これらの研究成果をまとめた論文が、2019年末に発刊された日本甲虫学会の英文誌『Elytra New Series』に掲載されました。
北野教授は、西表島にある本学沖縄地域研究センターと共同で、2007年から島内の水生生物の生息状況や生態調査および保全活動に取り組んできました。2013年9月の調査中に、これまで見たことのない水生昆虫を採集したため、詳細に調べたところ、国内での記録がない「Spercheus stangli」と確認。本科の構成種の多くは、オスの頭の両端が突出していることから鬼の角に見立てて「オニガムシ科」「オニガムシ属」と名付けるとともに、本種は背中にコブのようなふくらみがあることから「コブオニガムシ」と命名しました。北野教授は、「西表島には水生昆虫の研究者が多く訪れますが、コブオニガムシは動きが非常に緩慢なうえ、枯れた木の裏側に張りついているので、これまで見つからなかったのではないかと思います。多様な生物が生息している西表島に本学の研究施設があることは、研究調査の躍進に大きくかかわり、学生の教育の幅も広がります。今後もセンターにお世話になりながら、学生とともに調査を継続することで、教育の場として活用していければと思います。また、西表島をはじめとする南西諸島の生物相や各種の生態を明らかにし、それらの知見を保全に役立てたい」と話しています。
また、今年2月4日には北野教授が編纂に携わった『日本の水生昆虫』(発行:文一総合出版)が刊行されました。この図鑑にも、コブオニガムシが紹介されています。