医学部の猪口客員教授、渡邊助教らによる「がん転移抑制創薬を加速させる画期的評価システム」に関する論文がアメリカの科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されました

2019年11月05日

医学部医学科外科学系救命救急医学の猪口貞樹客員教授と渡邊伸央助教、先進生命科学研究所を中心とした研究グループが、がんの転移を抑制させる創薬の開発を加速させる画期的な評価システムを開発。その手法をまとめた論文が9月25日に、アメリカの科学雑誌『PLOS ONE』オンライン版に掲載されました。

がんによる死亡率の高さは再発や転移によるところが大きいと考えられており、それらを抑制できる創薬が待ち望まれています。猪口客員教授は、食道がん切除手術を受けた患者の予後とがん組織であるポドプラニン(膜タンパク質)の発現レベルに相関関係があることを発見。がんの再発・転移がポドプラニンと血小板膜のタンパク質CLEC-2の結合に起因することに着目し、これらの結合を阻害する化合物の探索を開始しました。

研究グループは、化合物の探索と並行して効率的な化合物評価システムの開発にも着手。遺伝子組み換え法により目印となるタンパク質を融合させたCLEC-2とポドプラニンを溶液中で結合反応させた後、この目印を利用してCLEC-2とポドプラニンの複合体を沈殿させるプルダウン評価システムを構築しました。溶液中に共存させた化合物がCLEC-2とポドプラニンの結合を阻害すれば、ポドプラニンの沈降が抑制されることになります。しかし従来のやり方では、洗浄液の添加、遠心分離、上清除去といった作業を1サンプルずつ行うため膨大な時間がかかり、薬の候補化合物評価(スクリーニング)には不向きでした。そこで、8連ピペットで操作が可能なチューブを用い、洗浄にはフィルター膜ユニット、検出にスロットブロットを採用。これにより、一度に48サンプルまで評価でき、従来の方法に比べて約1/5から1/10の時間での探索が可能となりました。

猪口客員教授は、「新たに開発したプルダウン・アッセイは、迅速、効率的で精度が高い評価法。さまざまな化合物の探索にも応用が可能です」と期待を語ります。渡邊助教は、「先進生命科学研究所の平山令明所長にご協力ただき、コンピューターによるドッキングシミュレーションを併用することで、すでに効果のある1化合物の取得に成功しています。より効果の高い化合物を選別し、創薬を加速させたい」と意欲を見せています。

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