化学科の荒井講師の研究グループによる論文が国際ジャーナル『Catalysis Science & Technology』に掲載されました

理学部化学科の荒井堅太講師の研究室で研究・執筆した論文「Cyclic telluride reagents with remarkable glutathione peroxidase-like activity for purification free synthesis of highly pure organodisulfides」がこのほど、触媒科学技術に関するイギリスの王立化学会誌『Catalysis Science & Technology』のオンライン版に掲載されました。荒井講師が研究代表となり、今年3月まで同研究室に所属していた大坂侑意さん(18年度・大学院理学研究科化学専攻修了)、羽田将弘さん(同・理学部化学科卒)、佐藤友海さん(同)による、抗酸化作用のある酵素「グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)」の代替分子の開発と有機チオール化合物のジスルフィド体への簡便な酸化方法についてまとめたものです。学会誌の紙媒体は、7月上旬に刊行され、本研究を象徴するグラフィックが本誌の裏表紙に掲載されます。

GPxが体内で正常に機能しないとがんやアルツハイマーといった病気の発症リスクが高くなることから、荒井研究室ではGPxの代替分子の合成方法を検討。テルル(Te)原子を含む有機化合物を開発し、試験結果からGPxと同じように非常に高い抗酸化作用を示すエビデンスが得られました。この化合物は、体内にある過酸化水素を水に還元して無毒化すると同時に、溶液中に存在するチオール分子を酸化させ、効率よくジスルフィド結合を生成させることができます。このチオール分子の酸化において、副生成物を出さずに純度の高いジスルフィド体を簡便に採取する手法を考案したことが高く評価されました。荒井講師は、「有機化合物の精製には有機溶剤をたくさん使うため環境に悪く、従来の方法では時間もかかるため、簡易に純度の高い目的物を採取できる今回の手法は、有機合成の研究において理想的といえます」と語ります。

荒井講師は5月31日、6月1日にイタリア・ペルージャ大学で開催された国際学会で招待講演を行い、同大学の学生を含む約70名の研究者を前に本研究の成果を発表。「想像以上に高い評価をいただきました。学生たちの頑張りがあっての研究成果なので、海外でも認めていただいたことをとてもうれしく思います」と笑顔で語りました。今後は、研究成果を生かした企業との産学連携事業も始動する予定です。

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