平成28年度(2016年度)私立大学研究ブランディング事業

文部科学省の2016(平成28)年度「私立大学研究ブランディング事業」に東海大学の取り組み「災害・環境変動監視を目的としたグローカル・モニタリング・システムの構築による安全・安心な社会への貢献」が選定されました。

私立大学研究ブランディング事業について

学長のリーダーシップの下、優先課題として全学的な独自色を大きく打ち出す研究に取り組む私立大学に対し、経常費・設備費・施設費を一体として重点的に支援するものです(文科省資料より)。地域の経済・社会、雇用、文化の発展や特定の分野の発展・深化に寄与する研究のタイプAと、先端的・学際的な研究拠点の整備により、全国的あるいは国際的な経済・社会の発展、科学技術の進展に寄与する研究のタイプBが募集されました。今年度は198校から申請があり、学識経験者らによる事業委委員において、事業の実施体制と事業内容が総合的に審査され、計40校(タイプA:17件、タイプB:23件)が選定されています。

東海大学の採択事業

「災害・環境変動監視を目的としたグローカル・モニタリング・システムの構築による安全・安心な社会への貢献」

  • 参画組織=長幸平教授(情報技術センター所長代理、情報理工学部長)、内田理教授(情報理工学部情報科学科)を代表とする学内研究グループ
  • 事業タイプ=「世界展開型」(タイプB)

※事業期間=5年

研究目的・意義

近年、国内外で大規模な災害・環境変動が発生しており、その対応が社会的な急務となっています。そうした中、本年4月に熊本地震が発生し、本学の阿蘇校舎を含めた県内の各施設等が甚大な被害を受けました。また、本学の湘南校舎・伊勢原校舎・清水校舎がある神奈川県・静岡県でも地震に限らず豪雨、洪水、火山噴火等、大規模自然災害の発生・被害が懸念されており、全学的に災害監視、安全・安心に対する意識が高まっています。国は第5期科学技術基本計画で「災害情報をリアルタイムで共有し、利活用する仕組みの構築を推進する」としており、熊本地震では、SNS等のソーシャルメディアによる災害情報の収集・発信の有用性が再確認されました。しかしながら、気象情報を提供する企業のアンケートによると、ソーシャルメディアを介して提供される災害情報の信憑性を疑問視する声もあり、その利活用には改善の余地があります。本学は、1974年に情報技術センターを設置し、地球観測衛星データを用いた災害・環境監視にいち早く取り組んでおり、1986年には国内大学初の本格的な衛星データ受信局として宇宙情報センターを設置。各種地球観測衛星の受信処理を行い、国内外のさまざまな研究機関と多くの共同研究実績を重ね、常に同分野で国内をリードしてきました。また、建学以来、大学で生まれた「知」を社会に還元することを理念としており、総合大学の強みを生かし、産官学連携による研究活動を組織的に推進しイノベーションの創出に大きく貢献する「研究の峰」の構築を全学的に進めています。この「研究の峰」の1ユニットとして、安全安心社会創生のための研究拠点形成を目指す取組み(安全・安心プロジェクト)が昨年度より開始され、地震予知や火山モニタリング、津波の浸水シミュレーション、ソーシャルメディアの減災応用、耐災害通信などの研究を活発に推進しています。

本事業では、これら衛星観測等によるグローバルな情報と、地域住民等からソーシャルメディアを介して発信されるローカルな情報等を有機的に結び付け、災害・環境変動監視を目的としたグローカル・モニタリング・システムの構築を柱とします。さらに、総合大学の利点を生かした社会科学面の分析も加え、国内外に向け広く発信していきます。被災者や近隣自治体の意見のほか、熊本地震で甚大な被害を受けた本学の経験を加味し、災害時真に必要とされる新たなシステムとし、これを基に“社会の安全・安心に寄与する東海大学”のブランディングを図ります。

期待される主な成果

  1. 各衛星データを即時受信・処理し、内外の関連機関との情報共有による環境変動・災害監視への貢献
    NASAなどの衛星データを本学と海外の大学でそれぞれ受信・即時共有することで、広域な海氷分布・火山監視などを実現します。また、中国科学院と協力し、北京など大都市周辺で発生した大気汚染物質が東アジア領域にどのように拡散するかを検証。データ解析では、本学の各学部に所属する海氷、海洋、火山、大気などの分野の専門家を結集し、学際的な研究に取り組むことで、衛星データの高度利用を推進します。
  2. ソーシャルセンサからのリアルタイム災害情報抽出・分析・可視化・配信による自治体、地域住民の安全・安心への貢献
    災害時にソーシャルメディアを通じて発信されるさまざまな情報を、AI技術を使ってリアルタイムに分析し、有益な情報を自動的に抽出・分類して被災者の避難や安全確保のための行動、自治体の災害対応の意思決定支援などに利活用しやすい形に可視化して提供・配信する仕組みを構築します。また、災害時には通信インフラが途絶することも予想されるため、耐災害通信技術の研究・開発も進め、地域住民との交流や被災者のケアなどについても社会科学系、医学系の専門科を動員して地域住民の安心・安全に多角的な貢献を図ります。
  3. 国内外の関係機関のグローカル・モニタリング・システムの構築による地域貢献・国際貢献
    上記1、2の成果を有機的に融合させ、最終的にはグローバルな監視システムとローカルな監視システムを統合し、大学の独自色の強いグローカルな監視システムを構築します。

年次計画

  1. 平成28年度:湘南校舎に東海大学グローカル・モニタリング・センター(T-GLOM 仮称)を立ち上げ、19号館の屋上に設置する衛星受信アンテナを用いてNASAの衛星データなどの試験受信を開始します。
  2. 平成29年度:グローバルとローカルの双方の視点からの研究を進め、モニタリング・システムを構築し運用を開始します。グローバルの視点では、衛星受信処理システムの高度化や衛星ネットワークの構築、衛星データ・ドローン画像と現地調査用情報端末の連動試験などを実施します。ローカルの視点では、ソーシャルメディアの情報を用いたリアルチムクライシスマップ生成システムの構築や、被災住民のソーシャルケアに関するガイドラインの作成、地方自治体などでの地域ワークショップの開催などに取り組みます。
  3. 平成30年度:グローバル・モニタリング・システムおよびローカル・モニタリング・システムを連動したグローカル・モニタリング・システムを構築します。グローバルとローカルの視点からの研究をさらに発展させ、双方のシステムを統合して被災シナリオに基づいた連動試験を実施します。また、自治体でのワークショップのほかにも国際ワークショップを開いてシステムのデモンストレーションを行います。
  4. 平成31年度:グローカル・モニタリング・システムの検証と評価に取り組みます。衛星受信処理システムの検証・評価や受信ネットワークの拡張などに取り組む一方、ソーシャル・ネットワーク・サービスを活用した減災情報システムの国際展開や被災住民のソーシャルケアに関するガイドラインの運用を図ります。
  5. 平成32年度:グローカル・モニタリング・システムの改良と継続性ある運用体制の構築を図ります。すでに構築したシステムの改良と安定運用を図るとともに、成果報告会や国際ワークショップを通して、事業の成果を内外に広くアピールするとともに、今後の新たな展開を模索します。

進捗状況

成果報告