葉山茂英著『秤と錘の考古学』

 葉山茂英さんによる表題の著作が11月24日付けで同成社から刊行されました。東海大学から昨年度学位を授与された博士論文「考古学から見た秤」が下地となっています。弥生時代から中世(10世紀)までの秤の問題を追及した力作です(https://www.townnews.co.jp/0601/2021/10/22/596998.html)。
 弥生時代の秤用の錘「権」は西日本を中心に関心を集めています。先月も佐賀県の吉野ヶ里遺跡から古代の権が出土したことで注目されました。こうした各地・各時代の遺跡から出土する権や分銅について、葉山さんは悉皆的な調査の網を掛けて体系的に理解すべく研究を進めてこられました。本書のなかでも重点が置かれているのは、棹秤用の錘として評価できる弥生・古墳時代の権の問題です。葉山さんは実験を通じて棹秤の特性を突きとめ、そこでの知見を基礎に弥生時代から古墳時代にかけての棹秤の重要性を論じています。
 併せて関東地方の弥生時代から古代にかけての権やその模造品として捉えられる土製品を丹念に収集され、度量衡のうちの衡がどのような形で東国に及んだのかを論じている点も本書の特徴です。
 葉山さんは、神奈川県の社会科高校教員を長年務めたのち東海大学の大学院文学研究科史学専攻に進学され、博士前期課程と後期課程を終えられました。ご高齢だということもあって錘の実測図などを含む本書の挿図の製図作業には、学部4年生の江口桜彩さんと大学院生の白川美冬さんが手伝ってくれました。
 定価は6,000+税と少し高めですが、権の問題に興味関心をお持ちの方にはお勧めの書です。

 北條 芳隆(文学部歴史学科考古学専攻教授)