先進生命科学研究所特定助手の三神瑠美さんが、昨年10月31日から11月2日に福岡国際会議場・マリンメッセ福岡B館で開催された第96回日本生化学会大会「生き物は不思議だ! 生化学は楽しい!」で若手優秀発表賞を受賞しました。三神さんは、大学院総合理工学研究科博士課程1年次生に在籍(指導教員:荒井堅太講師・理学部)し、学びながら授業を担当して給与を得る本学の制度「特定助手」に任命され、研究を進めています。
三神さんの発表テーマは「カルシウムイオンによって活性制御される酸化的タンパク質フォールディング触媒の開発と機能評価」です。アミノ酸が連なっているタンパク質は、折りたたまれて特定の構造をとること(フォールディング)により、さまざまな機能や役割を担います。正しく機能するために不可欠な酸化的フォールディングはその過程で失敗することがあり、構造成形不全のタンパク質が細胞内に沈殿・沈着すると、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患などの原因となることが知られています。三神さんは、細胞内の物質輸送を司る小胞体内に高濃度で存在するカルシウムイオンに着目し、小胞体内で特異的に活性化される化合物の合成に成功。その物質がカルシウムイオンの存在下において正しい酸化フォールディングを促すことを明らかにしました。受賞した発表は、こうした研究過程と成果をまとめたものです。
三神さんは、「私は化合物の研究が専門であり、生命現象の解明を専門とする研究者が多く参加する生化学大会での発表は、限られた時間の中でいかに整理してわかりやすく伝えるか苦心しました。この研究で得られた知見は、神経変性疾患の治療薬における分子デザインといった有益な情報を提供するものと期待されます。成果をきちんと伝えるために聴衆の目を見て語ることを心がけ、そのために会場に向かう飛行機の機内や到着した空港でもずっと練習していました」と笑顔で振り返りました。「自分の研究内容に興味を持ってもらうために、さらにプレゼンテーション力を磨きたい」と話しています。
三神さんを指導する荒井講師は、「有名国立大学に所属する若手研究者がこぞって発表するレベルの高い大会での受賞は快挙です。発表内容の構成、スピーチや質疑の受け答えの堂々とした姿勢など、統合性が評価されての受賞だと思います。さらなるポテンシャルを秘めた研究者として、今後もますます研究を深めてほしい」と話しています。