生物学部海洋生物科学科の大橋正臣教授が一部を執筆した『サロマ湖はホタテガイを何枚育ててくれるか? 閉鎖性海域における持続的二枚貝養殖漁業』(門谷茂・阪口耕一著、恒星社厚生閣)が、このほど刊行されました。北海道北見市のサロマ湖では、限られた空間で飼育養殖されるホタテガイやマガキなどの二枚貝の持続的生産を確保するため、地元のサロマ湖養殖漁業協同組合が10年に1度、委員会を開いて独自に養殖許容量を設定する先進的な取り組みを継続しています。本書は10年以上にわたる環境モニタリングのデータを集約し、「サロマ湖はホタテガイを何枚育ててくれるのか?」を検証する一冊になっています。
海岸工学や水産土木が専門の大橋教授は、土木研究所寒地土木研究所に在籍当時から同委員会の取り組みに携わり、本学に着任した2018年度から委員に就任。本書では第3章「湖内外の海水交換」の執筆を担当しました。「サロマ湖はオホーツク海に面しており、潮の満ち引きで海水が流出・流入し、13~15日で湖内のおよそ半分の水が入れ替わります。この外海との海水交換量がホタテなどのえさになるプランクトンや懸濁態有機物の量に影響するため、数値計算で再現・予測した結果をまとめました」と語ります。本書は、長年継続してきた調査によって蓄積されたデータをもとに、各分野の専門家がさまざまな視点で解説しており、「海洋生物や養殖に興味のある学生にも手に取ってもらえたら」と話しています。
『サロマ湖はホタテガイを何枚育ててくれるか? 閉鎖性海域における持続的二枚貝養殖漁業』
【目次】
第1章 はじめに(門谷茂)
コラム 粒子態と懸濁態の区別に関する考え方(門谷茂)
第2章 基礎生産のモニタリング(塩本明弘)
第3章 湖内外の海水交換(大橋正臣)
第4章 流域河川からの流入量(三上英敏・五十嵐聖貴)
第5章 栄養塩と植物プランクトン量の時間的・空間的な変化(芳村毅・三上英敏)
第6章 ホタテ養殖海域における沈降粒子束の動態(門谷茂・森田康)
第7章 アマモ場の分布と生物量・炭素収支(藤井 真・仲岡雅裕)
第8章 動物プランクトンの季節変動(中川至純)
第9章 ホタテガイ養殖管理と水温依存性(阪口耕一)
第10章 マガキの養殖法と摂餌量(阪口耕一)
第11章 付着生物の種類と現存量(阪口耕一)
第12章 底生動物から見た養殖漁場環境(園田武)
第13章 まとめ(門谷茂)
第14章 サロマ湖環境のリアルタイム把握への試み(阪口耕一)