静岡キャンパスで10月5日に、国際一本釣り財団(International Pole and Line Foundation:IPNLF)によるセミナー「一本釣り漁業の意味を再認識する」が開かれました。海洋学部の李銀姫准教授が理事を務めるIPNLFは、漁業の持続可能性の実現に向けて、一本釣り漁業や小規模漁業を支援する国際チャリティ団体です。一本釣り漁業(手釣りやトローリング漁法等も含む)は国際的に規模が小さいため、市場流通へのアクセスが難しく、政策決定の場においても除外されるなど多くの課題を抱えています。漁業者の生活が危機的状況に陥ることもあり、その支援が急務となっています。今回のセミナーは、IPNLF常務理事のマーティン・パーベス氏の来日に合わせて開催されたもので、日本における小規模漁業の管理や支援、漁村の活性化等に関する政策や仕組みを学び、今後の世界的な小規模漁業支援に生かすことを目的としています。

当日は李准教授がモデレーターを務め、海洋学部の学生や静岡県内の漁業関係者、研究者、一般参加者など約40名が参加しました。海洋学部学部長の齋藤寛教授の歓迎のあいさつの後、基調講演ではパーベス氏が「小規模マグロ漁業の未来―近代化と革新の必要性―」をテーマに、「一本釣り漁業は、本来目的としていない魚や海洋生物を誤って捕獲する可能性が低く、海洋資源の保全につながります。また、経済的に脆弱な地域でも展開しやすい漁法の一つで、地域の雇用の創出にも貢献します」と説明しました。そのうえで、「現状では政府の漁業補助金の多くが大規模漁業に充てられています。環境保全や持続可能な漁業のためには、小規模漁業にAIを導入するなどの近代化や能力構築に資金を投じるべきです」と述べ、「日本の漁業は歴史が深く、世界への影響力も大きい。小規模漁業の活性化に向けて、ぜひ力を貸してほしい」と呼びかけました。
後半のトークセッションでは、李准教授とパーベス氏に加え、海洋学部の平塚聖一教授、一本釣り漁業を営むいとう漁協の竹安建氏、焼津水産高校の籾山誉人教諭、国際協力機構(JICA)の田村實氏が登壇。また、静岡県水産・海洋局の吉野晃博氏、MEL協議会の加藤雅也氏もコメンテーターとして加わり、それぞれの立場から一本釣り漁業の持続可能性について議論を深めました。


