大学院生物科学研究科の剣持さんが「2022年度日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会」で学生優秀発表賞を受賞しました

大学院生物科学研究科博士課程3年の剣持瑛行さん(指導教員=海洋生物学科・西川淳教授)が、9月2日から5日かけてオンラインで開催された「2022年度日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会」で学生優秀発表賞を受賞しました。

剣持さんの発表テーマは「駿河湾沖合食物網における海産枝角類の役割:安定同位体比解析とメタバーコーディング食性解析によるアプローチ」です。海産枝角類(ミジンコ)は、植物プランクトンを摂餌する一方、さまざまな肉食性動物に捕食されることから沿岸域の食物網において重要な役割をもつことが指摘されています。剣持さんは、本学所有の小型舟艇「北斗」に毎月乗船し、駿河湾で円錐型プランクトンネット「ORIネット」を使って海産枝角類を採取してきました。その結果、沿岸域で見られるはずの枝角類が毎年春から夏にかけて沖合で大量出現していることが判明。また、駿河湾特有の表流層によって沿岸から運ばれてきていることを明らかにし、2本の論文として公表してきました。一方で、それらが沖合の食物網においてどのような役割を果たしているのかは明らかになっていなかったことから、剣持さんは駿河湾沖合で多く出現する枝角類2種の役割を解明するために、安定同位体比分析によって沖合プランクトン群集の食物網構造を解析しました。また、体長1 mmに満たない枝角類を解剖して消化管内容物のDNA解析(メタバーコーティング解析)から食性推定を行い、2種で食段階の位置づけや食性が異なることを明らかにし、沖合での食物網において異なる役割を果たしていることを示唆しました。

剣持さんは、学部4年次生のときに西川教授の研究室で海産枝角類の研究を開始。学部卒業後は水産商社に3年間在籍していましたが、もう一度海産枝角類の研究をしたいという思いから会社を退職し、大学院に入学後、5年間にわたって研究に取り組んできました。「この結果は、西川先生をはじめ共同研究者や北斗の船員の皆さんなど多くの方に協力いただいたからこそのものです。細かな作業など大変なこともありましたが、データが取れたときの達成感は今でも忘れられません。枝角類の役割は明らかになっていないことがまだまだあるので、この受賞を原動力としてさらに研究を続けていきたい」と今後への意欲を語りました。

指導にあたる西川教授は、「プランクトン研究の第一線で活躍する研究者が多く参加している大会での受賞は大変名誉なことです。気の遠くなるような作業もありましたが、地道に黙々と研究に取り組める剣持さんだからこそ、今回の成果が出せたのだと思います。彼の地道な努力が評価してもらえてうれしいです」と話しています。