医学部付属病院消化器内科の上田孝医師(大学院医学研究科先端医科学専攻=博士課程・4年次生)が、2月10、11日に沖縄県宜野湾市で開催された第51回日本潰瘍学会(GI Week 2024)で、「急性出血性直腸潰瘍の臨床的特徴・再出血リスク因子の検討」をテーマに研究成果を発表。優秀な学術報告をした研究者に贈られる「学術奨励賞」を受賞しました。
急性出血性直腸潰瘍は、直腸から突然、無痛のまま大量に鮮血が出血する潰瘍性病変です。心疾患などの重篤な基礎疾患を有する寝たきりの高齢者に多く発症し、再出血しやすいことが知られていますが、病態や原因は明らかにされていません。上田医師らは、2016年12月から2021年12月までに医学部付属病院で治療した患者49名について、年齢や性別、基礎疾患、内視鏡所見、日常活動度といったさまざまなデータを解析。その結果、下部消化管出血の重症度を予測する指標である「NOBLADS score(ノブラッド・スコア)」の高さと片麻痺が、再出血のリスク因子となる可能性を見いだしました。上田医師は、「この結果から、急性出血性直腸潰瘍の再出血を予防するために留意すべき点が分かってきました。今後は、国内の他の医療施設とも連携し、より多くの症例を分析して結果を検証するとともに他のリスク要因の有無を確認する計画です」と展望を語ります。
上田医師は本学科を卒業後、付属病院の研修医を経て本専攻に進学。鈴木秀和教授(医学部医学科内科学系消化器内科学)の下、診療に従事するとともに、大学院生として研究を進めてきました。「鈴木先生からは、日常の診療の中で抱いた疑問をもとに、研究を計画・実践し、その成果を世に出して医療に生かすことが重要という臨床研究の意義を学びました。大学院課程は今年度で修了しますが、引き続き研究を続けるとともに、診療と教育にもさらに注力したい」と意欲を話します。
鈴木教授は、「超高齢社会を迎えた我が国において、急性出血性直腸潰瘍を発症する方はさらに増えると予測されます。そうした中、この研究は入院中の患者さんや高齢者施設・介護施設入所者の発症予防にも役立てられると考えます。目の前の患者さんを救うための研究開発は、“最後の砦”として、地域の急性期医療・高度先端医療を担う本病院の役割であり、医師の使命でもあります。世の中のニーズに応える、研究意欲を持った良医を育成し、社会に貢献していきたいと思います」と話しています。