神奈川県の博物館との連携事業を実施しました

ティーチングクオリフィケーションセンターではこのほど、神奈川県内の博物館との連携事業を学内の松前記念館にて実施しました。6月21日から9月13日まで4回にわたって川崎市市民ミュージアムと、6月28日から9月13日にかけて3回にわたって横浜市歴史博物館と、それぞれ連携事業に取り組み、本センターが開講する科目「博物館実習2」(指導教員=篠原聰准教授)の実践実習として学芸員を目指す学生たちが資料の保存活用に取り組みました。

川崎市民ミュージアムとの連携事業「被災資料レスキュー」では、2019年に発生した台風19号の被害で収蔵品の一部が浸水してしまった水損紙資料の洗浄や乾燥などの復旧作業に協力。同ミュージアムで学芸員を務める谷拓馬氏と菊地悠介氏が被災後からこれまでの経緯や洗浄作業の工程などの説明をした後、学生たちは和紙などをはじめとした紙資料を洗浄しました。紙資料を2枚の網で挟み、水を張った容器の中で付着している汚れやカビなどを除去し、吸水シートで水気を拭き取った後に資料を扇風機で乾燥させました。学生からは「資料を濡らすことにかなり抵抗がありましたが、被災資料を扱う機会はなかなかないので貴重な経験になりました」「洗浄中には独特の臭いが感じられた」といった声が聞かれました。

菊地氏は、「洗浄してもらった紙資料は水損紙資料のごく一部であり、資料の復元にはまだまだ時間がかかります。実際に触れたことで、通常の資料との違いを感じてもらえたと思います。近年、日本国内ではさまざまな災害が頻発しており、この先も博物館が被害にあうことも考えられます。学芸員を目指す皆さんが被災資料を扱う可能性はゼロではないので、若いうちにこの経験をしたことは大きな財産になると思います」と話しました。

横浜市歴史博物館との連携事業「大学と博物館の協働による文化財資料の保存活動事業」では、横浜市歴史博物館が資料を整理している「伊藤宏見旧蔵資料群」の中から、掛け軸を対象としてコンディション調査とドキュメンテーションを行いました。初めに、横浜市歴史博物館で学芸員を務める𠮷井大門氏がレプリカの掛け軸を使って、取り扱い方法や名称などについて説明。掛け軸に強い力を加えずに壁にかける動作や収納方法などを教わった学生たちは、2人1組のペアでポイントを意識しながら繰り返し練習しました。その後、学生たちは𠮷井氏による指導のもとで、博物館から借用した約本の掛け軸のドキュメンテーションを実施。破損部分などを確認し、𠮷井氏が実際に使用しているひな形に沿ってレポートに記入しました。

学生からは、「照明や展示場所によって見え方が多少は異なることは分かっていましたが、場所や見る角度を変えて調査するとは思いませんでした」「想像していたより壁にかける作業が難しく、コツをつかむまで苦戦しました」と話していました。

𠮷井氏は、「博物館ではガラスケース内に展示しているので、今回のように露出展示を見るのはとても貴重な機会だと思います。作品に触れることで、資料の繊細さや作品ごとにそれぞれ異なる特徴、歴史的背景などを感じてもらえたのではないでしょうか。また、昨年度も参加してくれた学生は掛け軸をかける作業やドキュメンテーションがとてもスムーズで、前回の学びがしっかりと生かされていてとてもうれしい」と語っていました。

さらに、9月13日には第一線で働く学芸員との意見交換会も行い、川崎市市民ミュージアムと横浜市歴史博物館の学芸員や関係者らから学生にメッセージが送られました。

【連携先】

川崎市市民ミュージアム(神奈川県川崎市中原区等々力1-2)
https://www.kawasaki-museum.jp/

横浜市歴史博物館(神奈川県横浜市都筑区中川中央1-18-1)
https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/