第63回公開セミナーLet’s不思議!「農の今昔」を開催しました

九州キャンパスが熊本日日新聞社と共催している第63回公開セミナーLet’s不思議!「農の今昔」を12月3日に、熊本校舎で開催しました。本セミナーは、大学の知を社会に還元することを目的に学内外の専門家が科学技術、政治経済、スポーツ、環境など時事問題や社会状況に合わせたさまざまなテーマについて語るものです。今回は、第1部「科学的落語『サイエンス焦点』」では、伝統話芸である「落語」を楽しんだ後、本学の教員がサイエンスの目でその一節に焦点を当てて解説。第2部「農業県熊本を担う高校生」では「地域動植物や地域資源活用、食文化や伝統文化の継承」の取り組みについて発表しました。

地域住民や学生、教職員ら約140名が参加した当日は、初めに木之内均九州キャンパス長があいさつ。「本学は文系、理系の壁をこえて社会に貢献できる人材育成を目指しており、キャンパス長に就任してからは特に熊本をはじめ九州に貢献できる大学を重要視しています。今日のような機会を通して皆さまから忌憚のないご意見をいただき、さらに発展していきたい」と期待を語りました。続いて桂枝平さんが、町の若い衆が酒の肴を持ち寄り酒宴を開く「寄合酒」を披露した後、文理融合学部地域社会学科の前田芳男教授(学部長)が「農村の持続可能性~寄合いの社会学~」と題して講演しました。前田教授は、町内会の歴史を紹介するとともに、以前の農村には毎週のように年中行事や祭りがあり、隣近所、親戚が協力して田植えなどに従事していたことを解説。「労働の苦しみも五穀豊穣の喜びも皆で分かち合っていました。今も寄合酒をしているのは、そのころの農業を体験している最後の世代でしょう」と語り、「農村的な寄合いの意味を知る者がいなくなろうとしています。病気の子どもの代わりにロボットが修学旅行に行く時代です。農村の持続可能性、未来はどうなるのでしょうか」と問題提起しました。

続いて古今亭圓菊さんが「家見舞い」を披露し、農学部農学科の松田靖准教授が「肥と食生活~日本の循環農業の科学~」をテーマに講演。引っ越し祝いに古道具屋で肥瓶を持って行った一節に焦点を当て、江戸時代には人糞が重要な肥料の原料として取引されていたことや、発酵させて肥料化する工程、成分比などを解説しました。「昭和30~40年ごろから下肥利用が衰退するとともに生野菜を食べることが徐々に定着し、腸内寄生虫などの経口伝染の減少につながりました」と説明。また、「8月24日がドレッシングの日に制定されています。野菜の日(8月31日)の上にあるから、8×3×1が24になるからという説もあります。少しでも皆さんのうんちくになれば」と語り、会場の笑いを誘いました。

第2部では、熊本県立南稜高校の生徒が「『がんばろう!人吉・球磨』~地域資源を活用した木育活動の実践~」についてプロジェクト発表し、熊本県立矢部高校の岸本怜旺さんが「ニホンミツバチと共にある豊かな暮らしを提案するために」をテーマに意見発表。熊本農業高校の生徒が、来年10月に九州キャンパスを含む県内各地を会場に行われる「第74回日本学校農業クラブ全国大会」についても紹介しました。

なお、本セミナーの詳しい内容は12月25日(日)の熊本日日新聞朝刊に掲載される予定です。