医学部医学科の学生と卒業生が「マヒドン王子記念賞国際会議2023」のラポーターを務めました

医学部医学科の学生3名と卒業生1名が、1月24日から29日までタイ・バンコクで開催された「2023年マヒドン王子記念賞国際会議」(Prince Mahidol Award Conference2023=PMAC 主催:タイ国政府、マヒドン王子記念賞財団 共催:世界保健機関(WHO)、世界銀行、独立行政法人国際協力機構(JICA)、ロックフェラー財団、ビル&メリンダ・ゲイツ財団ほか)に参加。各国の医師らと数名のチームを組み、講演などの議事録やサマリーを作成するラポーターを務めました。

PMACは、国際保健に貢献した人を顕彰するとともに国際社会における保健関連の重要な課題の解決に向けて議論する国際会議で、毎年同時期に開かれています。今回は、「新しい保健医療計画の設定―気候変動、環境、生物多様性のつながりから」をテーマに開催されました。会議にはWHOや世界銀行をはじめ、各国の政府関係者、学識者、研究者、市民団体の代表者らが参加し、講演やシンポジウムが行われました。

近藤哲平さん(3年次生)は、気候正義(化石燃料の大量消費で気候変動を引き起こした先進国がその対策に取り組み、被害を受けている途上国との不公正さを是正する考え方)に関するセッションを担当。「タイやカナダ、バングラデシュの医療関係者と交流する中で、質の高い保健医療には、医学だけでなく政治・経済・環境・食料といったさまざまな要素が関連することをあらためて認識しました。広い知見を有する医師を目指し、多様な分野に関する学びを深めたい」と意欲を語りました。

環境と政治活動に関するセッションを受け持った立石ひなのさん(2年次生)は、「この議論で印象に残ったのは、日本と海外の抗議活動(デモ)に対する考え方の違いです。何かを変えたいと思ったらまずは声を上げ、その声を真摯に受け止める社会を醸成しなければならないと感じました。期間中は多様な分野のスペシャリストや世界で活躍する医師と出会うことができ、将来、自分がどのような医師になりたいのか、どのように貢献できるかを考えるきっかけにもなりました」と振り返りました。

古川遼さん(2年次生)は、「化石燃料と健康の変容」と題したセッションを担当。「環境や保健医療の専門家に加えて石油関連業者も登壇し、緊張感のある議論が展開されました。多くのステークホルダーが存在するからこそ、こうした討論が必要だと実感しました。他の分科会の聴講やフィールドトリップで訪れたマヒドン大学医学部生との交流を通じて、日本と比較しながら世界やタイの医療事情を知ることができ、医学や英語を学ぶモチベーションが高まりました」と話していました。

本学科卒業生の岡田まゆみさんは、救命救急医療の専門医として国内外で活動しているほか、近年は保健所長として新型コロナ対策にも取り組んできました。インドやアフリカの公衆衛生や食料政策の専門家が登壇した「気候変動や生物多様性の損失による健康への影響と対策」に関するパネルディスカッションを担当した岡田さんは、「それぞれが担当した討議の内容や国際医療について、折あるごとに学生たちと語り合いました。彼らにとっても、世界の保健医療の潮流を知るとともに、日本の現状や課題を認識する機会になったと思います。学生の参加は、視野の広い医師を育てるとともに、厚生労働省やJICA、WHOなどに対して『東海大学医学部』をアピールする機会にもなっていると感じています。今後も継続して学生が参加できることを願っています」と語りました。 指導する木ノ上高章准教授は、「PMACへの学生の参加は、過去に本学が展開していた『東海大学21世紀保健指導者養成コース』などを通じたJICAと本学との関係から得られているものです。今回のテーマは気候変動がベースのため、保健医療を中心としつつも一般的な話題が含まれると想定し、公衆衛生学を本格的に学んでいない低学年の学生も容易に参加できると考えました。最初は緊張していた学生たちでしたが、ラポーターの務めが終わると笑顔が倍加しました。国際会議の運営を支え、世界的な議論に参加することは、次世代を担う若者にとってよい刺激になったと思います」と話していました。