東京工科大学工学部機械工学科准教授の大久保友雅氏による特別講義を実施しました

総合科学技術研究所では3月6日に、湘南校舎で東京工科大学工学部機械工学科准教授の大久保友雅氏による特別講義を実施しました。レーザー分野に関する研究の最新動向を知る機会にするとともに、今後の研究やキャリア形成に向けて考えの幅を広げる機会として企画したものです。当日は、レーザー関連の研究の取り組む学生や教員らが聴講しました。

大久保氏は、「サステイナブルな社会の実現を目指したレーザー技術の数値計算」と題して講演。はじめに、自身の研究する太陽光励起レーザーやレーザー加速試験などの研究を紹介し、「全ての研究で、前提として自作のコードによる数値計算を行ってきた」と話しました。続いて、金属を溶かす熱源にレーザー光を採用した積層造形法「Selective Laser Melting(SLM)」とレーザーを対象製品に照射して照射領域に金属粉末を噴射することによりレーザーで粉末を溶解盛りする造形法「Laser Metal Deposition (LMD)」の2種類の金属3D プリンタについて解説するとともに、SLM 法における粉末の充填率や加熱領域、LMD 法における数値計算結果と実験結果との比較について説明しました。さらに、AIに光学素子の特徴を学習させて設計に生かすことを目的とした超ハイパワーレーザーの研究開発を紹介し、誘電体多層膜の平均反射率を学習させる方法や計算条件などを解説。最後に、航空機エンジンの高効率化に向けた研究について説明し、「SiC/SiC CMC(Ceramic Matrix Composites/セラミックス基複合材料)をエンジン材料に用いることで数%の熱効率の向上が期待されます。ですが、SiC/SiC CMCは使用実績が乏しく信頼性の担保が必要となります。そこで従来の加速試験方法とは異なる新たな手法が求められ、それを実現するためにSelective Laser Thermoregulation(SLM)法を用いた新たな試験装置の開発に取り組んでいます」と語りました。また、数値計算とAIによるパラメータの検討についても話し、「自作のプログラムでも、それなりに計算することが可能だと考えられます。実験を再現するという目的ではなくフレームワークの構築であれば、AIに学習させるデータ生成方法として活用もできるのではないでしょうか」とまとめました。

本講演を企画した橋田昌樹教授は、「レーザー研究に取り組む大久保先生から最新の研究動向を聞くことで、学生たちは自身の研究への意欲や将来像について考える機会になったのではないでしょうか。また、私自身も多くの学びがある講演内容でした。大久保先生をはじめ東京工科大学との共同研究などもこれをきっかけに行っていければ」と話しました。