屋外彫刻メンテナンスイベント「彫刻を触る★体験ツアー」を実施しました

教職資格センターでは11月27日に東京都北区文化芸術活動拠点ココキタとJR板橋駅東口駅前広場で、屋外彫刻メンテナンスイベント「彫刻を触る★体験ツアー」(共催:筑波大学・つくばアートメダルプロジェクト、公益財団法人北区文化振興財団)を実施しました。本センターでは、学芸員を目指す学生が実際に彫刻に触れながら、屋外彫刻のメンテナンス方法を学ぶ機会を設けようと2014年度から湘南キャンパス内にあるブロンズ像のメンテナンスを実施。地域貢献活動として秦野市や藤沢市、東京都北区などでも同様の取り組みを行っており、今回もその一環として実施し、市民や学生ら約20名が参加しました。

午前中はココキタで、筑波大学芸術系助教の宮坂慎司氏の指導のもと粘土や石膏、ワックス(蝋)を用いたアートメダルを制作。「メダルと聞くと多くの人が平らで丸い形を思い浮かべると思いますが、もっと自由に、手のひらに乗るサイズのアート作品をイメージしてみましょう。冷えると固まるワックスは、粘土では難しい形も造ることができるので、思い思いに手を動かして造形してみてください」と説明すると参加者は黙々と制作に取り組みました。

午後は板橋駅東口駅前広場に移動して、武蔵野美術大学教授の黒川弘毅氏と本センターの篠原聰准教授の指導を受けながら、中性洗剤やブラシを使って北村治禧作の彫刻作品『麗新』を洗浄しました。黒川氏は作品に水をかけながら、「水が彫刻の曲線やくぼみなどによってどのように流れていくか見てみてください。メンテナンスでは、ブラシを通して彫刻のディティールを感じてみるのも面白いと思います。見るだけが鑑賞ではなく、能動的に働きかけて作品を楽しむことが本来の鑑賞」と語りました。人が多く行き交う駅前に設置されていることもあり、清掃中には通りすがりの近隣住民も飛び入り参加するなど注目を集めました。参加者からは、「1時間ほどの作業でここまできれいになるとは思いませんでした。洗浄後の作品は表情がどこか柔らかくなったように感じました」といった感想が聞かれました。
 
北区文化振興財団の庄司万里氏は、「1日の中で制作とメンテナンスを体験できるこのイベントを通して、美術作品への理解が深まったのではないかと感じています。北区には屋外彫刻が多くあるので、こうした活動を継続的に開催していきたい」と期待を語りました。サポートした学生からは「趣味や好みがアートメダルに表れていて面白かった」「寒い屋外での作業でしたが参加者が集中して取り組んでおり、サポートのしがいがありました」といった声が聞かれました。企画を担当した篠原准教授は、「屋外彫刻は全国各地に設置されていますが、メンテナンスはほとんど行われていないのが現状です。彫刻を後世に残していくには人とのかかわりが重要になることを学生も参加者も感じてくれたのではないでしょうか。北区と連携した活動を来年度も継続したい」と話しています。