公開講座「石狩湾洋上風力発電について考える」を開催しました

札幌キャンパスでは11月、12月にオンラインと対面で、東海大学公開講座ヒューマンカフェ(道民カレッジ連携講座)「石狩湾洋上風力発電について考える」を全3回に分けて開催しました。生物学部海洋生物科学科の河野時廣教授が講師を務め、石狩湾の海洋環境と生態系や、洋上風力発電による影響について解説しました。

11月1日から21日までオンラインで配信した「PARTⅠ『石狩湾とはどういう海か、そして風車』」では、藻場など特有の生態系が形成され水産資源も豊富な石狩湾で行われた風力発電機(風車)の設置に伴う大規模工事が、風や海に与える影響を解説。工事によって巻き上がった砂や泥が水面に広がり海底への光を遮るほか、北西季節風を遮断するなど、生態系や湾内循環などに大きな影響を及ぼす可能性があることを紹介しました。11月25日から12月15日まで配信した「PARTⅡ『洋上風力先進地、北ヨーロッパでわかったこと』」では、北ヨーロッパにおける海洋調査や洋上風力発電施設での調査結果をもとに、水産業や生態系に与えた影響を説明。河野教授は、地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出を抑制するため、アメリカやヨーロッパで大規模風力発電施設が数多く建設されている現状に触れ、風車の海中構造物による攪乱が湾内の堆積物や生態系に与える影響や、石狩湾に風車を建設した場合、10年単位で海底地形が変化する可能性があると指摘しました。

12月18日には札幌キャンパスの国際交流会館マルチメディアホールで、「PARTⅢ『北海道の自然と風力発電』」を開催し、河野教授と東京農業大学生物産業学部北方圏農学科准教授の白木彩子氏が講師を担当しました。河野教授は、「風車をつくるとき、まわすとき周囲への影響〈音・影・景〉」と題して講演しました。脱炭素社会に向けて風力発電が注目されている一方、風車の建設工事で起きる騒音や、景観の阻害、風車の回転時に生じる影が近隣の住宅に負担を与えるといった現状について、実際の写真や映像、音源を用いて解説。「本来、風力発電施設が建設されるのは静穏な地域が多い。規則的に変動する振幅変調音は、近隣住民に大きなストレスを与える可能性が高いと考えられます」と、課題を挙げました。続いて白木氏が、「陸上風力発電施設による鳥類への影響 知見の整理とオジロワシへの影響」をテーマに講演。国内外の事例を通じて風車と鳥の衝突事故や生息環境の改変・消失など、鳥類の生存率や繁殖率低下が現れた調査の結果を報告しました。また、北海道におけるオジロワシとオオワシの風車衝突事故について、両種の主要な死亡要因となっている現状や、事故が起きやすい立地などを解説しました。講演後は聴講者から多くの質問が寄せられ、活発に議論が交わされました。