「光を操り、風を促す-環境デザイン・エンジニアリング」を開催しました

東海大学では2月26日にオンラインで、建築都市学部オープニングセミナー「光を操り、風を促す-環境デザイン・エンジニアリング」を開催しました。本セミナーは「Linkage 人・建築・都市を○○でつなぐ」を共通テーマとし、4月に開設する建築都市学部の理念や教育・研究活動を周知することなどを目的として昨年からシリーズで開いてきました。第3回目となる今回は、環境デザインエンジニアでアラップ・アソシエイトの荻原廣高氏(神戸芸術工科大学准教授、東京藝術大学非常勤講師、芝浦工業大学非常勤講師)が講師を務めました。

荻原氏が所属するアラップは世界33カ国に288のオフィスを構え、構造設計や環境設備設計、環境アセスメント、エネルギー戦略、マネジメントコンサルティングなどを幅広く手がけています。講演では、「建築家とエンジニアリングがコラボする面白さを知ってほしい」と、建築家・伊東豊雄氏を筆頭に構造、設備、ランドスケープ、ライティングなど各分野の専門家と議論を交わしながら岐阜市立図書館「みんなの森 ぎふメディアコスモス」に「グローブ」と呼ばれるいくつものドーム型の構造物を作り上げた経緯を説明。自身は気候風土を調査するとともに過去の気象データも分析し、不織布を用いたグローブで館内に柔らかい光をつくり出し、長良川の水を活用した床輻射冷暖房を設置したことを解説。「場所によって温度や光の加減が異なり、気分や目的に合わせて選べるムラのある居場所をたくさん作って利用者の満足度を高め、エネルギー消費率も50%削減しました」と語りました。

また、大阪府松原市の松原図書館のプロジェクトでは、もともと農業用のため池を埋め立てて建設される予定でしたが、「地域住民の生活に根付いた景観を簡単に埋め立ててしまうのは違うのでは?」とため池を残したうえでその中に建物を作ることを提案。こちらも多彩な分野の専門家が携わり、600mmの厚い壁で温熱環境を保つとともに、壁で構造を支えるため屋内に柱が不要になる点を生かして立体的なひとつながりのスキップフロアを設け、さらに水面で冷やされた空気が1階の給気窓から吹き抜けフロアに流れるように本棚の向きを調整した工夫などについて解説しました。

講演後には、建築都市学部学部長就任予定の岩崎克也教授(工学部建築学科)の進行で多くの学生からの質疑応答も行い、「設備設計者と環境エンジニアとの違いは?」「環境デザインによって建築が大きく変わった経験はありますか?」といった質問に荻原氏が丁寧に回答。最後に学生たちに向けて、「25年間エンジニアリングをやってきましたが、素晴らしい人たちと出会い、プロジェクトごとに違った形でコラボレーションできる毎日を楽しんでいます。建築家だけが商売ではありませんし、一人では絶対に良い建築はできませんから、自分が好きな分野を選んで、良いコラボレーションができる人になってほしい」とメッセージを送りました。