木村准教授が「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業成果報告会」で講演しました

工学部機械工学科の木村啓志准教授(マイクロ・ナノ研究開発センター)が、3月10日にオンラインで開かれた「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(再生医療技術を応用した創薬視線基盤技術の開発)成果報告会」で講演しました。木村准教授は、2017年度から国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が展開している本事業に採択され、「創薬における高次in vitro評価系としてのKidney-on-a-chipの開発」に関する研究を展開してきました。本報告会では、さまざまな研究機関や大学の研究者とともに、5年間の研究成果を報告しました。

木村准教授の研究室では、マイクロ流体デバイス技術を活用してこれまでにない臓器モデル(Microphysiological system: MPS)を構築し、動物実験に頼らずに医薬候補品の安全性や効果などを評価できる新たな創薬基盤の開発を目指しています。5年前からは、㈱ニコンや、腎臓内科医の南学正臣教授(東京大学)、藤井輝夫教授(同)らと共同で、腎臓の機能を再現するモデルデバイスの開発と評価方法の構築に向けた研究に取り組んできました。体に不要な物質を排出する尿を作る重要な働きを持っている腎臓の中でも、血液から不要物を取り除いて原尿を作る糸球体と、原尿内の水分と栄養素を再吸収する尿細管の機能を人工的に再現したMPSチップを開発するとともに、ニコンが販売している細胞培養観察装置「BioStation CT」をベースに、デバイス内で起きるさまざまな現象を24時間自動で観察できる観察システムを構築しました。

報告会ではこれらの成果とともに、「今回開発したMPSデバイスは本事業内で唯一製品化され、21年4月から試験販売されています。汎用性が高い多孔膜搭載型二層流路デザインとなっており、さまざまな臓器モデルに適応しています。また、今後製品展開予定の送液システムやなどにも互換性があることから、製作プロセスをそのままにさまざまな流路形状へ応用できるのも特徴です」と話しました。また、「本研究に参画してくださった皆さまの協力をいただきました。心より感謝するとともに、今回の成果を今後の研究活動でさらに進展させていきたい」と抱負を語りました。