阿蘇くまもと臨空キャンパスで11月18日と19日に、日本動物遺伝育種学会第24回大会と同シンポジウムが開催されました。同学会は、統計遺伝学と分子遺伝学の統合的な発展とともに、高度な遺伝・育種戦略を策定し、DNA情報を利用する産業やライフサイエンスへも貢献できる体制を整えることを目的として組織された学会です。家畜の育種や動物の遺伝学の研究に取り組んできた研究者をはじめ、獣医学、実験動物学、水産学などの分野で動物の遺伝と育種の研究に取り組んできた研究者らが所属しています。今回の大会では本学総合農学研究所の今川和彦所長が大会長、農学部動物科学科の松本大和准教授が大会実行委員長、稲永敏明准教授が実行委員を務めました。
18日の大会では、ポスター発表が実施され、農学部の学生も3組が参加。個別質疑応答などを経て西田礼子さん(4年次生)らによる「熊本系褐毛和種における牛伝染性リンパ腫抵抗性に関する研究」が特別賞選考対象演題の口頭発表に進み、優秀賞を受賞しました。西田さんは、「学部生のうちに学会発表を経験したいという思いで、所属する稲永先生の研究室で取り組んできた研究テーマであり、これからまとめていく自分の卒業研究にも関わる内容で発表に臨みました。口頭発表は緊張しましたが、他の研究者の方たちのお話を伺う機会になり、卒業研究への意欲が高まりました」と話していました。
19日はシンポジウム「小さいものから大きなものへ~ポストコロナ時代のウイルス・微生物学~」を開催。初めに大会長の今川所長があいさつし、関係者への謝辞と共に「本学農学部のあった阿蘇キャンパスは2016年に発生した熊本地震で多大な被害を受けて熊本キャンパスに移転し、今年度から阿蘇くまもと臨空キャンパスでの教育・研究を開始しています。そのスタートの年に本学会を開催できました」と語りました。その後は同学会の西堀正英会長が座長を務め、熊本保健科学大学の志多田千恵氏が「熊本県内土壌中の破傷風菌分布調査と分離菌のゲノム解析」、熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センターの佐藤賢文氏が「ヒトとウイルスの関わり合い~ヒトT細胞白血病ウイルスとウシ白血病ウイルスを例として~」と題してそれぞれ講演。今川所長は「内在性レトロウイルスと胎盤の獲得、進化と多様性」をテーマに研究成果の一端を紹介し、ウイルス遺伝子のゲノムへの取り込みと、その一部の働きによって哺乳類に見られる胎盤の獲得と構造の多様性について語りました。
最後に会場を交えた総合討論の時間も設けられ、話題提供者3名が登壇。多数の質問が寄せられ熱心な意見交換が行われました。最後に登壇者が熊本県における今後の研究の展望を語り、今川所長は、「今後も生産者や熊本の皆さんに還元できるような研究を展開していきたい」とまとめました。