3.11生活復興支援プロジェクトがシンポジウム「東北から能登へ~復興まちづくりの経験はどういかせるか~」を開催しました

チャレンジプロジェクト「3.11生活復興支援プロジェクト」が2月18日に、岩手県大船渡市の民宿とまり荘でシンポジウム「東北から能登へ~復興まちづくりの経験はどういかせるか~」を開催しました。本プロジェクトは、2011年3月の東日本大震災発生直後から同市三陸町越喜来泊地区などで、公民館の建設や地域交流イベントの開催などの復興まちづくりに協力してきました。今年3月末をもってプロジェクトの活動終了が決定したことから、今回のシンポジウムはこれまでの活動を振り返るとともに、その経験を他の地域における復興にどのように生かすかを考えることを目的に企画したものです。地域住民やプロジェクトの学生、卒業生、研究者が登壇。湘南キャンパスとオンラインでつなぎ、約30名が参加しました。

当日は、初めにプロジェクトリーダーの橋本泰さん(観光学部3年次生)が、「東日本大震災から間もなく13年が経過しますが、今年1月1日の能登半島地震など全国各地でさまざまな災害が発生しており、復興支援活動の重要性が高まっています。復興から得た教訓を今後どのように生かせるかを検討しましょう」とあいさつしました。続いて泊地区の住民が当時の経験を語り、「地域住民が集まる公民館がなくなったことが一番の不安材料でしたが、東海大学の皆さんが震災復興の拠点となった応急建築『どんぐりハウス』を作ってくれて本当にありがたかった」と振り返りました。その後、プロジェクト活動の初期、中期、後期を代表する卒業生たちが当時の活動を振り返り、初代プロジェクトリーダーを務めた下田奈祐さん(大学院工学研究科2013年度修了)は、「設計や空間デザインを学ぶ工学部建築学科の3年次生として、“自分に何かできることがある”とプロジェクトを立ち上げました。現地の様子を見て、まちの未来を創っていく持続可能な復興支援がしたいと思いました」と話しました。工学部元教授で在職中はアドバイザーとして学生たちの指導にあたったNPO法人アーバンデザイン研究体(UDM)の杉本洋文代表理事は、プロジェクトの発足経緯や活動の成果について、「学生だけの活動が、次第に地域住民の方にご協力いただけるプロジェクトへと変化していったように、復興支援において最も重要なのは、被災地の住民と外部から来た人が共に活動していくことだと学びました」と振り返るとともに、「この成果を能登地震の被災地に直接的に継承することは難しいが、復興にはコミュニティの一体化はもちろん個々人が自分でできることを増やしておく必要性があることを伝えたい」と語りました。

最後に、プロジェクトアドバイザーを務めた木村英樹学長補佐(工学部教授)が東日本大震災以降における本学の災害対策を紹介するとともに、「プロジェクトは泊地区の皆さんにあたたかく迎えていただき、学生にとって親のような存在になっていきました。大変ありがたかった」と感謝の言葉を送りました。

現地でシンポジウムの運営に携わった橋本さんとメンバーの半谷義弘さん(法学部2年次生)は、前日に泊地区公民館でUDMの杉本代表理事、作山康副理事長(芝浦工業大学教授)、金子哲也事務局長(建築学科非常勤講師)ら専門家、地域住民らとの交流会に出席。「どんぐりハウス」を移築してオープンした「結っ小屋」の活用策や、プロジェクト終了後の学生と地域住民間の交流に向けたアイデアなどについて、活発に意見を交わしました。また、シンポジウム当日の午前中には、登壇者の一人で2017年度プロジェクトリーダーを務めた杉山愛さん(政治経済学部2019年度卒・本学職員)らも合流し、共に「結の丘」と名付けられた高台移転住宅地など泊地区の現状を視察して回りました。

橋本さんと半谷さんは、「プロジェクトは一定の役割を終え今年度で終了しますが、これまで先輩方が培ってきた交流はすごいことだったと改めて認識する機会になりました。今後はどのような形になるかわかりませんが、また泊地区にうかがい交流の機会を持っていきたい」と話していました。

なお、シンポジウムの進行及び登壇者は以下のとおりです。
〇プロローグ
・「趣旨説明」橋本泰さん(観光学部3年次生)
   UDM・杉本洋文代表理事
・「泊地区区長挨拶」(代理)泊区公民館長・小野寺均さん

〇セクション1「泊地区住民の経験」
・「泊地区の被災と復興」泊地区・千田哲志さん
・「震災の体験とその後」泊地区・佐川静香さん
・「漁師の立場から」泊地区・村上軌道さん

〇セクション2「プロジェクトOB・OGの経験」
・プロジェクト初期代表・下田奈祐さん(大学院工学研究科2013年度修了)
・プロジェクト中期代表・花塚優人さん(工学部2016年度卒)
・プロジェクト後期代表・杉山愛さん(政治経済学部2019年度卒・本学職員)

〇セクション3「UDMの経験」
・UDM・金子哲也事務局長
・UDM・作山康副理事長
・UDM・杉本代表理事

〇セクション4「まとめ」
・「私たちが引き継ぐもの、そして伝えるべきこと」橋本さん
・「東北から能登へ」杉本代表理事
・「閉会挨拶」泊区公民館長・小野寺さん
       木村英樹学長補佐(工学部教授)