松前記念館(東海大学歴史と未来の博物館)では8月2日に、湘南キャンパスで「彫刻を触る☆体験ツアー2025」(共催:神奈川県秦野市スポーツ文化部文化振興課、神奈川県高校生インターンシップ)を開催しました。このイベントは資格教育センターによる博物館実習の一環で、学芸員資格の取得を目指す学生や地域住民らが、キャンパス内にあるブロンズの屋外彫刻に直に触れ、メンテナンスを体験するものです。日ごろと異なる芸術鑑賞法や保存の意義を知ってもらおうと2014年度から実施しており、今年で11年目を迎えました。

当日は、「神奈川県高校生インターンシップ」に登録する県内の高校生や東京造形大学の学生、自治体職員、一般市民らも含め32名が参加。まず、浜松市内で屋外彫刻などの清掃、鑑賞を行う市民団体「彫刻みまもり隊みつばち」の活動に取り組む高嶋直人さんがメンテナンスの意義や、清掃に使う洗剤、ワックスなどの調合について解説。続いて青空のもと北村西望作「松前重義胸像」と舟越保武作「山田守像」の2体のメンテナンスに取り組みました。学生たち参加者は、高嶋氏や松前記念館の田中実紀学芸員からアドバイスを受けながらブロンズ像の汚れや傷など状態を確認。専用の洗剤を使って汚れを落としました。合間には、東京造形大学教授の藤井匡氏が「内田晴之,《INTERSECTION》について 抽象彫刻の彫刻的要素」と題して、秦野市のメタックス体育館はだの前に設置されている彫刻作品について解説しました。また、国立民族学博物館教授の広瀬浩二郎氏は「点字=『生・造・譲』の先へ―聴覚の振動を触角の震動に―」のテーマで、点字を発明したフランスの盲学校教師であるルイ・ブライユの思考プロセスや、触覚を通した美術作品鑑賞について講演し、参加者が熱心に聞き入る姿が見られました。



参加した学生は、「屋外彫刻のメンテナンスというなかなかできない体験ができて、改めてこんなにもきれいになるものなのかと驚きました。また機会があれば参加したい」「一人でメンテナンスするのは体力的にも厳しそうですが、多くの方と一緒に作業は楽しくできました」「芸術学科で平面絵画を専攻しているので、立体の彫刻に触れて鑑賞するという体験は初めてとても新鮮でした。また、実際に触れることで“どのように作ったのか?””作者の意図は?“と考えるきっかけになりました」と話していました。秦野市文化スポ―ツ部文化振興課長の久保谷敏行氏は、「学生の皆さんと一緒に作業し、パワーを感じる機会になりました。今回の作業を通じて触ることで彫刻への愛着が深まり、身近に感じることができると知り、今後秦野市内の彫刻に対して多くの市民の方たちに同じように感じていただけるような取り組みを考えていければ」と話していました。


