「日ロeヘルス学術会議」を開催しました

東海大学では11月25日に政策研究大学院大学で、「日ロeヘルス学術会議」を開催しました。本学医学部医学科の中島功教授(外科学系救命救急医学)が国際電気通信連合(ITU)の「eヘルス部会」(開発途上国での通信による遠隔医療支援を推進する部会)で議長を務めていることから、日本の都市構造に適した通信技術を要するロシアと連携し、両国がeヘルス(※)の分野で長期的に相互協力を図ることを目的にスタートアップシンポジウムとして実施。当日は学内外から多くの教職員や研究者、学生、大学院生らが参加しました。

開会にあたり本学の山田清志学長が、「2018年は日本とロシアで、『ロシアにおける日本年』及び『日本におけるロシア年』が相互開催され、両国の伝統や文化を紹介する行事や研究協力などが広く行われました。その中では、ライフケアとヘルスケアに関する相互協力の取り組みもスタートしています。東海大学ではQOL(Quality of life=人生の質)向上に向けた取り組みを展開していますが、今回のテーマであるeヘルスの分野でも、今後ロシアとの協力で強化していきたいと考えています」とあいさつしました。続いて、本学医学部長と総合医学研究所所長を歴任し、本学特別栄誉教授で政策研究大学院大学名誉教授の黒川清氏が登壇。ITで世界をつなげる医療の形を提案したほか、世界における遺伝子研究の進捗状況や、テクノロジーの進化によって研究が進んだ事例などを紹介しました。

シンポジウムでは、日本とロシアの各大学から人工知能(AI)を使った医療や、医療と経済のかかわりなど、eヘルスの分野に携わる研究者がそれぞれの研究成果を報告。本学からは中島教授が登壇し、今年5月に開催されたITU開発部門のSG(スタディ グループ)総会で提案した「通信技術を用いた鳥インフルエンザの拡大防止策」について発表しました。「感染が疑われる鳥の群れを全部殺してしまうと経済的な損失になるため、100羽に1羽ほどの間隔で小さな通信機器を取り付けて感染状況を管理するなど、“追う”ことに注力するシステムの構築を目指しロシアと連携していきたい。また、向こう10年で通信技術やAIを用いた医療がどんどん進んでいくと予想されており、医師はより研究に励むことで、医療の発展に従事していかなければならない。そして、新しい通信技術を構築して生まれた成果を開発途上国の技術促進や医療援助に役立てることで、貧富の差のために必要な医療が受けられないという世界の現状を変えられれば」と語りました。さらには、「ロシアを中心に25カ国で組織される衛星通信のための国際的な組織「インタースプートニク」で使われてきた高軌道衛星システムが、建物による電波障害の多い日本の都市環境に適していることから、両国で協調し新たな周波数資源の二次利用をITUに提案していく」とも語りました。

また、研究発表の合間にはポスターセッションも実施。本学の医理工系の学生・研究者が研究成果をまとめたポスターを展示し意見を交わしたほか、文部科学省の平成29年度「大学の世界展開力強化事業(ロシア)」に採択された「ライフケア分野における日露ブリッジ人材育成―主に極東地域の経済発展を目的として―」のポスター展示と広報も実施しました。

なお、翌26日には、学術会議で登壇したロシア国立研究大学経済高等学院のクゾネツォフ教授、ロシア医療情報協会のチェボタエフ副会長が湘南校舎を訪れ、健康学部の学生を対象にAI(人工知能)を医療に活用する方法などをテーマに特別講義を実施しました。

※eヘルス:インターネットなどのIT技術を活用し、健康づくりに役立つ情報やサービスを利用または提供すること

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