新型コロナウイルスを遺伝子解析の分野から知るマイクロ・ナノ研究開発センター講演会を開催しました

マイクロ・ナノ研究開発センターでは6月17日に、オンライン講演会「新型コロナウイルス SARS-CoV-2のゲノム解析で分かること、わからないこと」(第63回MNTCセミナー)を開催しました。ウイルスの遺伝子解析が専門で、本センターに所属する中川草講師(医学部医学科基礎医学系分子生命科学)が講演。WEBビデオ会議システム「Zoom」を通じて教職員や学生約80名が参加しました。

中川講師は最初に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスであるSARS-CoV-2はおよそ直径100㎚で、リボ核酸(RNA)に保存されている遺伝情報をもとに人に感染して増殖することを説明しました。コロナウイルスには多様な種類が存在しており、主に哺乳類や鳥類に感染することが分かっていることや、新型コロナウイルスを遺伝子で系統分類すると、2003年に中国で発生したSARSコロナウイルス、そして「キクガシラコウモリ」というコウモリで多数見つかっているコロナウイルスと同じグループに属していると語りました。
また、「SARSコロナウイルスは肺などの下気道で増殖する傾向がある一方、新型コロナウイルスは鼻、口や喉(のど)など上気道でも感染して増殖できることが無症状患者や軽症状患者の増加につながっている可能性がある」と指摘。そのうえで、遺伝子解析に基づく最新の研究成果について触れ、各国の研究者が各地で採取された新型コロナウイルスの遺伝子情報を共有し、ウイルスの特性や系統を調べる研究を進めていることを紹介しました。さらに、日本では今年2月にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で集団感染が起きた当初は中国型といわれる新型コロナウイルスが多かったものの、最近はヨーロッパ由来の新型コロナウイルスが増えていると紹介。「このような系統はウイルスの突然変異のパターンによって分かります。今後もこのような変異は蓄積されていき、変異の多くはウイルスの性質に関係するものではありませんが、世界により広がればより感染しやすい変異体が生まれる可能性があることは否定できません。そのこともあり、今後数年間は感染予防に努める必要があります。また近年、人に感染症を引き起しているウイルスの多くは動物由来となっています。経済発展やグローバル化に伴って今後は、さまざまな動物が持つウイルスについて研究することがますます重要になっていきます」と語りました。

講演後の質疑応答では、手洗いの効果やゲノム解析の創薬への貢献の可能性などについて活発な意見が交わされ、中川講師は、「ウイルスはモノである以上、我々の細胞に侵入して大量に増殖されなければ、症状が現れたり他の人に感染させたりしません。手洗いは予防のために極めて有効なのでぜひ徹底してほしい」と呼びかけました。