村田達郎教授と松田靖准教授らの研究グループが水前寺成趣園と阿蘇・波野の芝草が遺伝的に近縁であることを解明しました

農学部応用植物科学科の村田達郎特任教授(総合農学研究所所長)と松田靖准教授らの研究グループがこのほど、熊本市・水前寺成趣園の芝草と阿蘇市・波野地区で採取した芝草が遺伝的に近縁であることを解明。村田教授、松田准教授の指導でこの研究に取り組んだ大学院農学研究科2年次生の宮地伯明さんが、6月8日から10日まで東京農業大学世田谷キャンパスなどで開催された「2018年度日本芝草学会春季大会」で研究成果を発表しました。

本研究は、熊本地震の影響で農学部と農学研究科の拠点が熊本キャンパスに移ったことを受け、「阿蘇と熊本をつなぐ研究に取り組みたい」と村田教授が発案しました。キャンパスからも近い水前寺成趣園は、熊本藩細川家の初代藩主・細川忠利が1636年ごろから築いた「水前寺御茶屋」を始まりとし、1600年代後半の細川家3代綱利のころにほぼ現在の形となったとされる全国的にも有数の桃山式回遊庭園で、国内外から多くの観光客が訪れています。水前寺成趣園の管理に携わる方々の間では、この芝草は阿蘇から移植されてきたと語り継がれていますが、これまでその起源地に関する記録は残されていませんでした。「そういった背景もあり、現在までに推定されていない水前寺成趣園の芝草の起源地推定を目的とし、2016年から、DNAレベルでの比較と形態学的、組織的観察を用いて、阿蘇地域から採取した個体と水前寺成趣園で植栽されている個体の遺伝的類縁関係および表現型形質による評価を行いました」と松田准教授は振り返ります。

成趣園の芝草はゴルフ場のラフなどに使われる野芝ですが、傷みやすい通路沿いなど一部に高麗芝が移植されています。今回の研究では、人が立ち入らない築山に着目。その周辺は築庭当時からの野芝を維持していると考えられることから、阿蘇地域の草千里や波野などから採集した19系統と比較しました。その結果、阿蘇市波野地区(旧:浪野村)の根子岳牧野組合の草地の野芝が遺伝的に最も近かったことが判明。葉の形状や、水や養分を運ぶ維管束の並び方も成趣園の野芝の特徴と合致しています。宮地さんは、「今回の研究はもともと、学部時代の同級生が手掛けていたもので、大学院に進学して以降は自分が引き継いできました。仮説を裏付けでき、学会で発表できてほっとしています」と話しました。

村田教授は「成趣園では熊本地震の被害を受けた庭園の築山など一部の修復に取り組まれていますが、外部から新たな芝を持ち込むことなく現存する芝を増やすことで歴史的価値を守ってほしいと考えています。また、今後はやはり地震で被害を受けた熊本城周辺の芝草もその由来を探り、市民の憩いの場である熊本城二の丸広場を従来の形に戻すような復興を提案していきたい」と話しています。

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