第58回公開セミナーLet’s不思議!「食と健康を考える」を開催しました

九州キャンパスが熊本日日新聞社と共催している第58回公開セミナーLet’s不思議!「食と健康を考える」を12月2日に、熊本キャンパスで開催しました。今回は農学部バイオサイエンス学科の永井竜児教授が「食品による老化予防と運動能力向上の可能性について」と題して、老化の仕組みや効果的な運動を紹介。さらに、九州キャンパスと交流及び連携に関する包括協定を結んでいる尚絅大学・尚絅大学短期大学部から同大生活科学部栄養科学科准教授の川上育代氏が、「おいしさと健康を求めて」をテーマに味覚の構造などについて講演しました。

当日は、約250名が参加し、まず永井教授が登壇。生活習慣病やメタボリックシンドロームなど自身の取り組む研究テーマについて紹介し、メタボリックシンドロームが起きる原因やそれによって引き起こされる脳梗塞や心筋梗塞、血管の老化といった疾病について解説しました。そのうえで、糖質からできる老化物質である「AGEs」や体内で脂質の代謝から生成するケトン体について語り、「糖尿病ではケトン体が増えて血液が酸性になることも合併症の一つとしておこりますが、ケトン体からもAGEsが生成することが分かりました。このケトン体の増加はレモンなどに含まれるクエン酸を摂取することで予防できるのではないかと予測して実験したところ、ラットにおいてクエン酸の摂取はインスリン治療と同じレベルまでケトン体を改善することがわかりました」と研究成果を披露。また、トマトに含まれるエスクレオサイドAという物質が動脈硬化予防に有効であることや、加齢に伴う筋肉量の減少が肥満につながることなどを紹介し、「加齢に伴って筋肉量が落ちると代謝が悪くなり、太りやすくなります。筋肉を維持するには最大負荷60%くらいの強度の運動を長く続けるスロートレーニングが有効」とアドバイスしました。

※永井教授の研究室ホームページはこちらからご覧ください↓
http://www2.kuma.u-tokai.ac.jp/~rnagai/

続いて川上氏が味覚について語り、「ご飯の写真を見ておいしそうと感じるのは、過去の食経験が反映されているから。食前は目と耳と鼻で、食事中は目と耳と鼻と口でおいしさを感じています。近年では消化管にも舌にあるうま味受容体が存在することがわかっています」と紹介。うま味を感じるメカニズムや「味わう力」を維持することの重要性、女子大生を対象に行った実験結果について解説しました。そのうえで、「私たちはおいしさと健康を両立するために、先人の知恵としてうま味を上手に組み合わせてきました。例えば『だし汁』に少量の塩を加えるとうま味が強くなる効果もその一つであり、薄味でもおいしく味わう方法といえます。このように日常の生活の中でうま味を意識すると、味の対比効果や相乗効果によって味わう力が高まり、ひいては生活習慣病予防につながります」と語りました。

食と健康のかかわりや大切さについての話題に参加者は熱心に耳を傾け、終了後には最新の研究成果などに対して多数の質問が寄せられました。