宮崎大学農学部と連携した授業を実施しました

農学部では、東海大学と宮崎大学、南九州大学の3大学で2009年度に文部科学省「大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム」(教育GP)の採択を受けた「畜産基地を基盤とした大学間 連携による家畜生産に関する実践型統合教育プログラム開発」に取り組んでいます。本学部ではこの活動の一環で、13年度から大学間連携による実践型適正家畜生産技術者養成教育として宮崎大、南九州大と連携して、2年次生を対象に「適正家畜生産規範学1」「同2」「適正家畜生産規範学実習」「実践適正家畜生産規範学」の4科目を卒業単位に含まれない随意履修科目として開講してきました。2月2日には、今秋セメスターに開講した「適正家畜生産規範学2」のまとめとなる授業を実施。宮崎大農学部助教の酒井貴志氏と徳永忠昭氏らによる講義や、本学阿蘇実習フィールドで生産した「草原あか牛eco beef」の食味試験などを行い、履修した2年次生14名とすでに履修済みの3、4年次生も聴講生として出席しました。

授業ではまず、本学部の岡本智伸学部長(応用動物科学科教授)が登壇。農業を巡る世界経済や社会状況について説明しながら、「農業は本来、環境、風土を利用して成り立ち、地域の生態系からサービス(恵み)をもらって成り立っているものであり、環境に根差した農業とは『小農=Small Scale Farming(SSF)』です。アジア地域の農業はSSFがベースで、日本でも山間地などはそうなっています。しかし、現代の農業には、多様性や総合性、柔軟性、地域性が求められており、SSFが盛んな地域にも欧米の大資本が入ってきたために、SSFが淘汰され、その国の経済の根本が崩れていく様子が多々見られています。その中で、国連は2015年に持続可能な開発目標『SDGs』を打ち出しました。経済的効率だけを追い求めるのではなく、地域に根差して持続的に発展できるような目標を立てようというものです。授業を通じて、地域に根差した農業のシステムをどのように評価し、つなぎ、価値を理解していくか大きなヒントを得てください」と語りました。

続いて宮崎大農学部助教の酒井貴志氏と徳永忠昭氏が登壇。酒井氏は「世界の畜産から見た循環型農業(畜産)~『持続可能な農業』とは」と題して、持続可能な農業をめぐる歴史や循環型農業の概要、自らがかかわってきたベトナムやネパールなど途上国における畜産の様子を解説しました。また、徳永氏は、「日本の畜産における経験を科学技術から解く」をテーマに講義。熊本県畜産農業協同組合連合会で審査員を務めた経歴や、研究者として取り組んでいる「和牛の霜降り投球を、肥育中に超音波画像から推定できるサービス開発・提供」や「無線通信技術と画像解析技術を活用した黒毛和種子牛の体重測定値の推定」といった研究の成果を紹介しました。

本授業を担当する農学部応用動物科学科の樫村敦講師は、「阿蘇地域だからできる地域・環境的に続けられる畜産 東海大学での放牧による褐毛和種生産」のタイトルで講義し、日本における牛肉生産の問題点を指摘するとともに、阿蘇地域の生物多様性と持続性を生かし、伝統的農業を理解した農家での生産を目指して農学部が開発した「草原あか牛eco beef」の概要を解説。eco beefを定義づける生産規範について紹介しました。

その後は、eco beefの食味試験も実施。樫村講師が切り分けた肉をホットプレートで調理し、学生たちがその味わいを確認しました。さらに酒井氏、徳永氏、樫村講師と学生によるディスカッションも行い、eco beefの生産から流通そして消費について意見を交わしました。

樫村講師は、「今回の授業では若手教員による経験談を中心とした講義を通じて、日本のこれからの畜産が持つ可能性を探ることを目指しました。教育GPの採択期間は来年度で終了となりますが、今後もこの取り組みを生かしながら、阿蘇のあか牛の生産について学生たちがさまざまな視点から考える機会をつくっていきたい」と話しています。

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