東海大学マイクロ・ナノ啓発会【Tμne】第14回学術講演会を、2月26日にオンラインで開催しました。総合大学のメリットを生かした研究の情報交換やコラボレーションを目指し、マイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)に所属する教員が中心となって開いているものです。今回は招待講演やテクノロジーセミナーに加え、初めてワールドカフェ形式(活発で創造的な対話ができるよう、リラックスした雰囲気でメンバーを変えながら行うグループセッション)によるショートプレゼンテーションや、オンラインミーティングツール「SpatialChat」を用いた意見交換会も実施。本学の理学部や工学部、医学部、生物学部の学生や大学院生、教員をはじめ、大阪大学の学生や教員ら約110名が参加しました。
開会にあたり、世話人を務めた医学部医学科の中川草講師(基礎医学系分子生命科学)が開催の趣旨や企画の意図を説明し、「双方向で語り合えるさまざまなツールを準備しました。ぜひ活発にディスカッションし、交流を深めてください」とあいさつしました。前半の招待講演では、医学部医学科の教員2人が、それぞれの研究成果を紹介。山本典生教授(基礎医学系生体防御学)は「感染症の制御を目指して」と題して、国立感染症研究所などで携わったインフルエンザワクチンの早期開発・製造システムの構築や、SARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルスに関する研究成果について説明しました。また、新型コロナウイルス感染症の候補薬のスクリーニング結果や、高度な安全機能を備えた実験施設の整備状況についても解説し、「感染症を制御するための戦略の確立に向けて、お互いの強みを生かした共同研究ができればうれしく思います」と語りました。
続いて、長谷部光泉教授(専門診療学系画像診断学・医学部付属八王子病院血管内治療センター長)が、「マイクロ・ナノ表面改質による革新的医療機器の開発」をテーマに講演。医学と工学の博士号を取得し、20年以上にわたり医工連携で携わってきた「血栓ができにくい体内埋め込み型医療機器」開発の経緯を説明しました。さらに、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングさせた画期的なステントの概要や、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて展開している膝窩動脈以下の細径動脈硬化性病変に対する長期開存ステントシステムの開発、実用化に向けた取り組みについても紹介し、「一歩でも進めば、時間はかかっても必ず社会は変革できます。ぜひ若い人たちに参加してもらい、医工連携をよる研究を進展させたい」と呼びかけました。
後半のショートプレゼンテーションでは、MNTC所属教員らの進行により、学生や大学院生らがこれまで取り組んできた研究について報告。発表後には質問も多数寄せられ、活発な意見交換が見られました。また、テクノロジーセミナーでは血液検査デバイス「小型高感度イムノアッセイシステム」の開発・製造を手掛けるクリエイティブナノシステムズ株式会社技術開発部第2グループ課長の堀井和由氏が講演。マイクロ流路技術を導入した製品開発の経緯や臨床現場、基礎研究における活用の状況などについて解説しました。
最後の総評では、MNTCの喜多理王所長(理学部物理学科教授)が参加者や講演者への謝辞を述べ、「山本先生、長谷部先生からは、専門分野のお話に加えて我々や学生にも刺激になる言葉も寄せられました。今後の共同研究など、東海大のパワーを結集するきっかけになればと思います」と期待を語り、ショートプレゼンテーション「優秀発表賞」受賞者11名の名前を読み上げました。終わりに、中川講師とともに世話人を務めた医学部医学科の大友麻子講師(基礎医学系分子生命科学)があいさつし、「学生、大学院生の皆さんの発表からは、コロナ禍で制限のある中でも継続して取り組んできた研究の成果がうかがわれ、私たち教員もモチベーションが上がるきっかけになりました。来年度はぜひ皆さんと直接お会いしたいと願っています」と話しました。
【ショートプレゼンテーション 優秀発表賞 受賞者】
◇芝 燿汰さん(東海大学工学部応用化学科4年次生)
「ナノ材料の特性を活用した新規薬剤ラッピング材の創製と物性評価」
◇矢内宏樹さん(東海大学大学院総合理工学研究科修士課程2年次生)
「熱交換器に隣接するテーパ管内の流体運動の可視化計測」
◇黛 功樹さん(大阪大学大学院理学研究科修士課程1年生)
「α線核種を標識したがんターゲッティング分子の創製とがん免疫療法への展開」
◇石山泰成さん(東海大学理学部物理学科4年次生)
「ポリ-L-乳酸超薄膜の柔軟性発現の解析~次世代素材の基礎研究~」
◇山田明里さん(東海大学生物学部海洋生物科学科3年次生)
「コイを使ったサケグレリンの心筋障害緩和作用の確認」
◇飯塚結貴さん(大阪大学理学部化学科4年次生)
「オルガネラ選択的薬剤送達を目指したα線核種標識抗体の創製と機能評価」
◇横瀬颯人さん(東海大学工学部応用化学科4年次生)
「新規異方性材料としてのナノファイバー分散体の創製」
◇加藤 航さん(東海大学大学院理学研究科修士課程1年次生)
「グアニン-シトシン含量を制御した DNA の熱泳動現象」
◇岩松宏徳さん(東海大学大学院工学研究科修士課程1年次生)
「ボロン酸架橋キトサンナノファイバーの創製とにおい分子包接能評価」
◇上田大貴さん(東海大学工学部機械工学科修士課程1年次生)
「高次細胞アッセイ系に向けた肝細胞スフェロイド搭載型多臓器生体模倣システム」
◇小見山槙さん(東海大学大学院工学研究科修士課程1年次生)
「多臓器集積型生体模倣システムの実現に向けたスターラ駆動型オンチップポンプの開発」