デンマークでは3月23日に総選挙が実施されましたが、第1党の社民党が38議席と議席を減らしました(全179議席)。以後、左右ブロックによる連立協議が実施されましたが2ヶ月経っても、意見がまとまらず、ようやく6月3日に社民党を中心に、社会人民党、急進左翼党、穏健党からなる4党連立少数政権(第3次フレデリクセン内閣:四つ葉のクローバー連立、合計82議席)が発足しました。デンマークでは憲法上、行政権を有する国王が首相を任命するため、少数政権も成立可能です。政権の特徴は歴史上初めて女性大臣の数が男性大臣の数を超えたことです(隣国のスウェーデンやノルウェーでは既に実現しています)。

そして、連立協定政策の目玉が次の4点です。
①福祉の拡充と生活支援:歯科治療の段階的な無償化、さらには22歳未満の公共交通機関の無料化をすすめ、果物と野菜の付加価値税(VAT)を廃止する。
②巨大テック企業への規制強化:EUと連携してテック企業への課税を行なうとともに、SNSの利用年齢制限(15歳未満)を厳格化し次世代のメンタルヘルスを保護する。子どもの中毒性を煽るスマホアプリのアルゴリズムも徹底的に規制する。
③気候変動対策とグリーン移行:天然ガス使用からの脱却を推進する(2030年までに)、北海・バルト海における洋上風力発電の大規模な導入を目指す。また安全な飲料水確保のために農業の地下水規制を行なう。
④防衛力の大幅強化と外交・安全保障(特に対米)体制の強化:欧州の安全保障環境の変化を受け、2030年までに防衛関連の支出をGDP比の5%以上に増やし、デンマーク王国の主権や自決権を堅持する(特にグリーンランドを念頭に置いている)。
日本の政策と比べてどうでしょうか。次世代のメンタルも含めた健康と生活環境への配慮が真剣に議論されていることを感じます。今回の新政権は、歴史的な長さの連立交渉を経た結果誕生したため、各党が主張する少し派手な目玉政策が並ぶ結果となっています。
なお、新政権は少数政権であるため、政策ごとに他党の支持を得る必要があり、場合によってはこの先、政権運営が不安定化する可能性もあります。現在トランプ政権はイランとの駆け引きで多忙なため関与を弱めていますが、デンマーク領のグリーンランド獲得の野望についても消えていません。デンマークの内患外憂はまだまだ続きそうです。デンマーク人の決断を見守りたいと思います。
(執筆担当:佐保吉一)