文化社会学部ヨーロッパ・アメリカ学科では、1月15日に湘南キャンパスで「知のコスモス」シンポジウム「水の流れと文化」を開催しました。人々の生活に不可欠でありながら、ときに脅威ともなる水と人との関係性を、本学科の教員がそれぞれ専門とする地域・時代に沿って解説するもの。当日は約35名の学生や教職員が参加しました。
はじめに、河島思朗准教授が「古代ギリシア・ローマの水と神話:文明の誕生と流動」と題して、地中海地域の古代における水に関連する複数の観点を提示。川の流れと都市の誕生、神話における河神とその系譜、コルシカ島をめぐるエトルリア、フェニキア、ギリシア、ローマの拮抗などの視点から、地中海をめぐって人々が流動する様相を語りました。続いて、金沢百枝教授が「美術のなかの水辺」をテーマに、絵画に描かれた海や川について紹介しました。ヨーロッパでは長らく、水難への恐怖から海にはさまざまな怪物がいるとされ、海の怪物を倒すのは英雄や聖人とされていました。一方、川辺や湖畔においては、舟遊びや水泳を楽しむ姿を中世の時祷書挿絵に確認でき、ロマン主義や産業革命の影響があったことなどを説明しました。
また、丸山雄生講師は「fishyな映画たち:漁業とドキュメンタリー」と題して、漁業がドキュメンタリー映画に取り上げられる理由について論じました。ドキュメンタリー映画の最初期である1920年代から漁業が主要なテーマであったことや、『極北のナヌーク』や『Drifters』といった作品を紹介。また、2012年公開の『リヴァイアサン』で用いられた小型アクションカメラによる映像表現について解説しました。最後に飯尾唯紀准教授が登壇し、「ドナウ川の氾濫と反乱」と題して報告しました。18世紀におけるカルパチア盆地の水郷地帯を例に挙げ、氾濫原の地域住民の生活痕跡や、マリア・テレジア期に本格化した治水事業の歴史的背景、治水がもたらした帰結を紹介。そのほかにも、ハンガリー北東部に現存する氾濫原のフィールド調査の結果も交えながら、今後の研究課題と展望を示しました。
講演後は、報告者と参加した学生たちとの間で、資料の解釈や海外でのドキュメンタリーの表現方法、農村の自立的発展などをめぐって活発な議論が交わされました。