駐日フィンランド大使によるゲスト講義「フィンランドのアイデンティティと安全保障」を開催しました

文化社会学部北欧学科では5月30日に、駐日フィンランド特命全権大使のタンヤ・ヤースケライネン閣下によるゲスト講義「フィンランドのアイデンティティと安全保障」を開催。本学科のほか、国際学部国際学科や政治経済学部政治学科の学生・教員ら約250名が参加しました。

ヤースケライネン大使はこれまで約30年にわたって外交官として活躍しており、5カ国の大使館で勤務してきたほか、来日直前には本国の外務省政治局に所属し、フィンランドの歴史的な外交政策の転換となったNATO加盟に向けた実務を担当しました。講義では安全保障の概念や、ロシアによるウクライナ侵攻後にフィンランドがNATOに加盟するまでの手続きとその意義などについて紹介。安全保障は単に軍事力によるものではなく、高いメディアリテラシーと民間・学術・市民社会などさまざまな領域の連携によって構成されるものであると説明し、NATO加盟にあたっては与野党の垣根を超えた綿密な協議と国内世論調査の動向を見極めながら慎重に検討と手続きが進めたほか、隣国で緊密な同盟国であるスウェーデンと協調的なアプローチを取りながら準備した加盟申請について紹介しました。また、加盟の意義として、「北欧・バルト海地域の安全保障環境を強化するだけでなく、フィンランドが強みとする民間分野と融合した危機管理体制の構築や、北極地域に関する知見などを共有することでNATOに貢献し得る」と強調。一方で「今回の決定は不測の事態に備えるための行動であり、国内の状況は落ち着いている」と語りました。

講演後の質疑応答では、同じ北欧の国であるデンマークが今回の加盟申請に果たした役割をはじめ、フィンランド軍に対する国民の意識、外交官を目指したきっかけと仕事内容などの質問が寄せられ、ヤースケライネン大使は一つひとつ丁寧に答えてくださいました。