文化社会学部「知のコスモス」シンポジウム「ヨーロッパ・アメリカの都市の歩き方」を開催しました

文化社会学部ヨーロッパ・アメリカ学科では、7月24日に湘南キャンパス14号館で、シンポジウム「ヨーロッパ・アメリカの都市の歩き方」を開催しました。文化社会学部の連続企画「知のコスモス」の一環で、本学科の教員の研究成果を学内のみならず学外にも広く伝えることを目的に、学期ごとに実施しているものです。今回は「都市」を統一テーマとして、教員4名がそれぞれの専門分野からの知見を発表し、約60名の学生らが参加しました。

初めに河島思朗准教授が、「古代ギリシア・ローマの神話と都市」と題して、地中海地域の都市(例:ミュケーナイ、ヘルクラネウム、サルディーニャ島など)にまつわる神話を紹介しました。中でもローマについては、建国神話、牛広場、タルペイアの岩、アンナ・ペレンナの泉など、具体的な場所における神話と伝説を考察し、都市にまつわる神話の意義と、物語が誕生する軌跡を検討しました。続いて金沢百枝教授が登壇し、「中世絵画のなかの都市の情景―シエナ派の絵画を中心に―」をテーマに、14世紀のシエナ派を代表する画家のアンブロージョ・ロレンツェッティが、シエナ市庁舎「平和の間」に描いたフレスコ画『善政と悪政の寓意』(1338~1339年)について解説。「専制君主がいる悪政下の町では、インフラの崩壊や殺人、正義の擬人像の束縛などが見られる一方、善政下では増改築工事が進み、教育が行われ、食事やゲームや散歩を楽しむ人が描かれています」と紹介し、史料として絵を読み解くことで、中世の日常生活と都市のあり方を浮かび上がらせました。

また、中島朋子教授は、「ルイス・C・ティファニーとシカゴ」と題して、19世紀末から20世紀初頭のアメリカ・シカゴで室内装飾家・美術工芸家として活躍したルイス・C・ティファニーについて紹介しました。中島教授は当時のシカゴについて、「急速な経済発展を背景に、文化的な公共施設や摩天楼のオフィスビルの建築ブームが起こっていました。その中でティファニーが民主的・資本主義的なシンボルとなる街のランドマークとなり、人々に開かれたアート作品を作り出していきました」と解説しました。最後に丸山雄生講師が登壇し、「現代アメリカの都市空間とブラック・ライヴズ・マター」をテーマに発表しました。近年のアメリカでは、黒人に対する警察暴力への抗議として「ブラック・ライヴズ・マター(BLM)」と呼ばれる社会運動が盛り上がりを見せている様子を紹介。BLMの背景として、黒人の移動を制限してきた奴隷制以来の歴史、さらにはゲートで仕切られた住宅地、再開発とジェントリフィケーション、大量投獄など新自由主義的な社会で進む人々の分断を指摘しました。

報告後に設けられた質疑応答では、神話の解釈やBLMの影響と社会の変化、セキュリティの概念の歴史性についてなど、多くの質問が寄せられ、活発な議論が交わされました。

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