聴こうとしなければ聴くことのできない声

心理・社会学科で学ぶことのできることのひとつに、社会に声の届きにくい人たちの声を聴きとるという営為があります。障害のある人、小さな子ども、高齢者、性的マイノリティなど、聴こうとしなければ聴くことのできない声を聴きとり、そのこころの世界や社会での生きにくさを研究している教員から、さまざまな授業でそれを学ぶことができます。

中島由宇講師が翻訳に携わった、『知的障害のある人への精神分析的アプローチ―人間であるということ』(ヴァレリー・シナソン著、倉光修・山田美穂監訳 ミネルヴァ書房)が2月に刊行されます。著者であるシナソンは、精神分析という心理療法の実践・教育・研究機関として世界的に有名なタビストック・クリニック(当時)で、ほとんど心理的支援がなされていなかった知的障害のある人に精神分析を行った先駆者です。

「本書は、あなたをセラピールーム(心理療法がおこなわれる場所)に招待し、その中に導いてくれるでしょう。(中略)私たちは彼らが何者なのか、何を感じているのか、何を思い、何を欲しているのかを学ぶことができるのです。彼らの声に耳を傾け、彼らが自分で選んでもいない理不尽な制約を課せられている中でいかに勇敢に対処しているかに気づいていくと、私たちもまた、人間として成長します。私たちもまた、自分自身に制約があることを学びます。」(「日本語版によせて」より)